2011
06.14

古い友人のサイが隠居いたしまして、前々から隠居するならいっしょにと約束していましたけれど、私はその約束をまもることができませんでした。

ちょっとしたうしろめたさがあるのであります。

それで、雰囲気だけでも隠居老人に近づくために、仕事をするときは、こうやってロメオを腹にだいている今日この頃なのであります。

というか、三階のこの部屋にかってに上がってくるのはロメオでして、ドアを叩くものですから、しかたなく招き入れますと、膝の上におともなくとびのるのです。

子犬のときからロメオは狭い場所を好み、ぎゅっと抱かれて自由を拘束されることも嫌いではないようなのであります。枕にされることも厭いませぬ。
数時間、原稿を作成している最中も、私の腹の中におさまっているわけであります。

シャツの中にもぐりこみますから、腹があたたまって気持ちがいいのであります。

いちおうは気を使うのであります。せっかくおとなしくしているのだから刺激させることは極力避けているのであります。

ですから電話などがあると
「寝てましたか?」
とか、
「いっぱいやってましたか?」
などと電話の相手が敏感な人ですと、私の微妙な気づかいを、別に解釈することも多々ございますです。

そうやってどうやって察するのか、仕事がひと段落しかけたあたりに、床にとびおり、シャンプー後の水滴を弾き飛ばすときのように、ひとしきり体をふるわせ大きく伸びをすると階下にいってしまうのであります。

友人のサイと、そういえば二月以来あっておりません。
モリオカに帰ったときには連絡して、酒を飲んでいたのですが、こんどまた誘わねばならないのであります。