2011
11.05

天球儀を眺めながら、考えているのであります。
運命を考えているのであります。

釜石で震災に遭い、モリオカの別宅にすんでいる従弟のことを考えているのでありました。

お嫁さんを失った従弟は、二人の可愛い娘にべったりなのだとか。従弟の母親、つまり私メの叔母が語っておるのでありました。

ところが、
「じつはねぇ…」
と話をつづけたのでございます。
「その子たちがネェ」と。

小5の姉が、鬼のような顔で、小1の妹の腕といわず脚といわず、歯型がのこり血が出るほど噛むのだそうです。
小1の妹は最近になって原因不明のおう吐に見舞われるとか。

来るものが来たのであります。
震災後の精神錯乱とでもいうのでありましょうか。

そして従弟の方は、小6の姉に、お嫁さんの面影を重ね合わせるのでありましょう。可愛がるというよりは、娘に慰めてもらっているのだと、私メは診たのであります。
娘の精神的負担は、かばりか大きいのであります。

やがて、小6の娘は思春期を迎えることでありましょう。
自傷行為に走らないとも限りません。
無事に成人できるかどうか。

病院一家にそだち、苦労をしなかった人たちが、いま大変な局面に立たされているのであります。
星々の凶を告げる赤い矢がいく本も、従弟の家族にむかって放たれているようにしか見えないのであります。

「人生の帳尻は合うものね」
と別の叔母は語っておりますが、天球儀を眺めつつ、ため息が出るのであります。