2012
03.05
03.05
春がとくべつ好きというのではございません。
が、春が来るのが分かっていながら、春は苦手だと否定するのも芸がございません。
せめて形だけでも春らしいもので…ということで、まずはハマグリのお吸い物。
貝汁は、誰でも失敗しない数少ない料理の一つ。
されど、これがなかなか上手く出来ないのであります。
「うーん、いまひとつ、貝のコクが生きてないなぁ」
なんてことになりやすいものですから、油断はできません。
女なんて誰だって同じじゃないかというようなもので、同じだと言ってしまえば、たしかに同じ。が、それぞれに、やはりコクが違うのであります。
次なるはキャバクラ寿司とでも言いたいひと品でありますです。
酢飯に、中トロと、いくらをぶちあわせれば、これも誰でも失敗しないヤツなのでありますです。
食う時は醤油をダラリとたらせば、もう言うことは何もなし。
華やかなギャルの太ももをイメージしながら、パクつけは、春が来るのでございますです。
けっこう食えるものでお椀に三杯は軽いのでございますです。
口のなかでつぶれて弾けるイクラがまた、若くてうるさいギャルのベッドみたいでじつに楽しゅうございますです。
「おじさーん、張り切り過ぎてシンパーイ。腹上死しないでよ、お願いだからさ」
「腹上死させておくれ」
妄想の悦びも加わるのでありますです。
最後には道明寺であります。
桜もちより、ツブツブが舌に感じられる道明寺がよろしいのであります。
舌にのせると、そのツブツブした感触が、柔らかな舌の持ち主のお女性とのベーゼのように、甘く思い出されるのであります。
春のめざめが起きてきたようでありますです。
同時に、開運にもなろうというもの。
季節の料理はじつにエエものでありました。