2012
03.18

雨の夜、人の賑わいが恋しくて、回転寿司に行ったのでございます。
スシローは満員で駐車場にも入れず、なので、くら寿司へ。

いやはや、驚きましたでございます。
カプセルにお寿司が入っていて、それを取り出すために、女の子の店員の前で練習させられ、けれど、これがけっこう難しく、手間取っているうちに、ベルトコンベアの上の寿司が、となりのカップルの方まで運ばれてしまいますから、もう腰を浮かせて取る始末。

さらに、喰い終えた皿を、カウンター奥の投入口に落とし込むのであります。すると画面に皿の数がカウントされるのでありました。

なんだか、まるで台所の流しで喰っているような感じでありました。

しばらくして環境に慣れた頃、ふと、向かいの親子に視線が飛んだのでございますです。
幼児二人連れのカカさまでした。
化粧っ気なしのどうでもいい服をきたおカカさま。30代頃かと思いましたが、たぶん20代後半でございましょう。

このカカさま、箸の使い方がきわめてメチャクチャなのです。
グーにした手に箸をつっこんだような持ち方。

ふーむ、これはいかん!
と思いましたが、だまって眺めるばかり。

こんな箸の持ち方をしていては亭主は偉くなれませんぞ。

「いいのよ、ほっといてちょうだい、どうせダンナは出世なんてできないんたから」
と心の声が返って参りました。

お女性には耳に痛い言葉かもしれませんけれど、亭主の運勢というものは、おカカさま次第なのでありますですよ。

占いでも、鼻の高い奥方をもつ男は出世すると記されておりますです。
お育ちとかういうことではありませぬ。
鼻が低くたって、気品ある奥方は、亭主を、いやいや付き合っている男に良い運勢を与えるものでございますです。

私メは、一人のうら若きお女性をアシスタントにしたことがございますです。
この子が、また作法知らずの野性児でありまして、二年ほどかけてマイ・フェアー・レディを施したのでございます。
最初は反発を食らいましたが、やがて彼女の運勢が上昇するにつれて、素直にマナーを学ぶようになったのでございます。

現在、彼女は学者先生の奥方でありますです。

蛇足でありますが、私メの手作りの「奇門遁甲カレンダー」の時盤も忠実に守っておりまして、結婚前にはすでに世田谷にマンションを現金で購入するほどに実力をつけていたのでありました。

とにかく、お女性のマナーや気品は、とても重要でありますです。
自分には関係ないと思っても、美術工芸、あるいはお芝居などを見て、アカデミックな知識を身につけることは、まわりまわって幸運への条件となるものであります。

向かいのおカカさまは、「こらこら、ダメでしょう、そんなことしては!」と子供たちの態度を叱っておりましたが、その箸の持ち方のまま、なんと器用に寿司をつまんでは醤油にひたし、口へと運んでいたのでありました。

亭主どの、これはいくら働いても暮らしは良くなりませぬぞ、と見知らぬ夫殿に無言の声をかけたのであります。
「ちょとちょっと、そこのジジイ、お節介は焼かないでくださいね。お願いしますよ」
またしても、おカカどのの心の声が聞こえてまいったのでござますです。