2012
05.08

突如として生タコを食いたくなったのであります。

そういう時に限って店頭においてなくて町中の魚屋という魚屋をしらみつぶしに探すハメになるのであります。
が、運よくというか、最初の店で無事にタコを見つけたのであります。

タコの吸盤をはずしながら、コリッとした触感を味わうのであります。
岩塩をふりかけると、口のなかで吸盤が身が引きしまるのが、またじつに美味いのであります。

発作的にタコを食いたくなるというのは、カラダがタコの成分を欲しているからなのでありましょうか。
それとも麻薬的な何かがタコにはあって、禁断症状的なものなのでありましょうか。

タコに限らず、たとえばホルモンとか、ニンニクとか、魚の干物とか、餓鬼のようにカラダが欲して仕方ないことがございますですよね。イカのワタもそうでありますですね。

吸盤をはずした身は…身でイイのでしょうか、足の部分なわけですが、それはカルパッチョにしたのであります。

玉ねぎの千切りに混ぜ合わし、酢とオリープオイルと塩で味付け。

これが白ワインと絶妙なハーモニーを醸し出すのであります。

深夜、どーしても逢いたくてたまらず、電車を乗り継ぎ、大汗をかきながら、付き合っていたお女性のアパートに訪ねた、そのような若さは失われましたが、食いモノに対して、その情熱が移ったようであります。

お女性のアパートのドアをノックする胸が高鳴る高揚した気持ちを、ふと思い出しました。

恋愛とは、しばしば、その情熱によって滅ぶものでありますが、食いモノは違いますです。
まぁ、生タコ喰ったあとは、トイレの藻屑と化す危険は残っておりますが、「明日早いのよ」と迷惑そうな顔に失望することも、アパートにお女性が不在でドアの前で待つという裏切りを知る秒読み段階を体験することもございません。

若い頃の恥ずかしき想い出に浸りながら、吸い付きの良い生ダコを味わう夜なのでありました。