2012
05.28

花というものは、なんという淫靡きわまるものでありましょうか。

本日、5月28日は、旧暦の4月8日。
昔の人々は、今頃が花祭りとしていたのであります。

桜の花はとうに散り終え、初夏の花々が百花繚乱。

このお花などは、
「ぼく、じっとしててね」
と年上のお女性におおいかぶさられているほどの吐息を感じるのであります。
花と思えはよかったのであります。
「どうしちゃったの?」
と、大人の匂いを嗅ぎながら、ほうずきのように真っ赤に耳まで染めずとも、花だとおもえば。

私メは花を真正面から俯瞰して撮ることに、どうしても抵抗をおぼえるのであります。
やや斜めから出ないとダメであります。

それはお女性の目を見つめられないことと関係しているのかもしれませぬ。

仕事で人相を拝見するときは別として、お女性の目をのぞき込むと、そこにある卑猥な心に触れることを恐れているのかもしれませんです。
卑猥な心には、かような虫が棲んでいたりいたします。

「その虫をつかまえてやろうか?」
と舌先で眼球を舐める行動に、いつか出てしまいそうな気もいたします。
それは恋というものでありましょう。

肉体の蜜は求めながら、目の奥に飼っている花虫が、こちらの心に舞い込むことを恐れるのであります。

初夏の風は花々を揺らします。
花の茎はおもいのほか細いモノですから、微かな風に花は大きく首を振るのであります。
風に吹かれるたびに、花々は老いていくようでもあります。

いつか、総合病院にある人を見まいにいきましたら、点滴を歩行器にセットして歩いていたお女性をおみかけたものでした。

瞬間的に「どうしちゃったの?」と、上から覆いかぶさり、髪の毛で視界を塞がれた、その髪の隙間から光が乱反射しハレーションをおこしたような不思議な空間に、充満していた女の吐息を思い出したのであります。

季節を経ると、咲く花も成熟した色香をかもしだすのでありましょうか。
春先の桜の花より濃密な大人の匂いであります。

男を呑みこんだ真っ赤な秘所そのものではありませぬか。
そんな花々が初夏のいたるところで、
「季節はいましかないのよ」
「考えるのは後回しにしましょうよ」
と誘いかけているようでありました。

花祭りとはそういうことのようであります。

眩しい光は音もなくふりそそぎ、光の風が、心の奥をつかのま照らすのでありました。