2013
04.07

すこし眠っておりました。

昼過ぎに、郷里の老母から、画像の、バッケが届きました。
バッケと言うのは、ふきのとうのことであります。

実家の土手にいくつものバッケが芽吹くのであります。
すると、あれほどの雪がとけたのでありましょうか。
家の裏は雪でとざされて、土手まで行くこともできませんでしたのに。

春の濃縮した匂いが、包んでいた新聞紙にもこびりついているのでありました。

バカのひとつおぼえに、天ぷらを試みたのであります。

大ぶりのバッケはザクッと口の中で割れるのであります。

ほろ苦さが、甘口の日本酒とよく合うのであります。

しばらく帰っていなかった…と、けっして忘れてはおりませんでしたけれど、日々の仕事にながされていたことに気づいたのであります。

バッケは蕾より、すこし花がひらいた方が好みでございます。

電話しましたら、
「雨だぁ」

台所の電話で受けたようでありました。
雨音は聞こえませんでしたが、台所の匂いが伝わってきた気がいたしました。
冷蔵庫には、飲み残した日本酒があるはずであります。
開け閉めに、いささか渋くなったガラス窓を開ける力加減の感触まで思い出しました。
もう何年もそのままの、落ち穂拾いの安物のポスターも見えてきました。

すると、
その台所の上の二階の私メの部屋に、雪玉が投げられたことを、ふと思い出しました。
それは雪降りの深夜だったようでした。
窓を開けると、女の子が笑って手を振っておりました。
私メは、その窓から小便をしたような気がいたします。

いささか酔ったのでありましょうか。
幻想のような郷里の追想に耽りつつ、うたた寝をしたのであります。

食い残したバッケの天ぷらが、皿に冷えていました。