2013
04.26

まるでフランスの家の庭のような場所が、モータープールの中に残っておりました。

以前、地上げ屋からの被害に耐え残った家なのでありましょう。
隣近所が、みな土地を手放したなかで、一軒だけ頑張ったのでありましょうか。

日本庭園の形からすれば、無茶苦茶でありますが、雑草のなかに花々が次々に咲き誇るのも悪くありませんです。
夏には客たちは、蚊の襲来にやられながら「ごめんください」などと訪問するのでしょうか。
それとも訪ねる人は絶えてしまっているのかもしれませんです。

子供からも親戚からも変人扱いで、一人、黙々と庭の手入れをしていると想像することもできますです。

かような想像を裏切られたくないために、家の人が出てくるのを恐れて、足早にその場を去るのが賢いのでありましょう。

しかし、
観察しますと、なかなか良くできている庭なのであります。
泥棒の被害も受けることはありませんでしょう。

目を閉じると昆虫の羽音が聞こえてきそうであります。

花は、秋が更けるまで、季節を彩るのでありましょう。

いまは思春期の花。
やがて匂いのある花にとってかわり、そして熟女のような艶めいた花を咲かせるに違いありませぬ。

しやわせとは、こういうお女性…いや花々に囲まれて暮らす生活を言うのかもしれませんです。
そういう意味では、しやわせは滅んでしまっているようでもあります。

温室栽培の花を、お金を出して購入するのが普通ですから。
「もう、この花は花びらが開いているからダメよ。そっちの蕾の方をください」
などと命じる声を耳にしても、誰も変だとも思いませぬ。

咲き終わった枝に、忘れたころ、思い出したように栄養失調のような小さな花が開くのも、なかなかの風情でありますです。

占いをしていると、つい擬人化してしまう癖がついているようでありますです。