2013
06.19

よく行く本屋であります。
これでよく食っていけると感心するほどの、ちいさな本屋であります。
「あっ、オノさん、こないだの本ねぇ」
とジイさんが私メを手招いたのでありました。

近所の有閑バアさんが、たまたまモリオカの人でして、「浅田次郎のね、終わらざる夏っていいわ、お読みなさいよ。モリオカが前半の舞台なのよ」と言われたものですから、その本屋に行った時に「ある?」と聞いたのでありました。
その時は本屋になくて、文庫本だと思っていたけれど、じつはまだ文庫化されていなかったことが、後でわかったのでありました。

そして本日、図書館でその本を見つけた、ちょうどその帰り道「オノさん」と呼びとめられたのであります。

そしたら、「あったのよ、本。取り寄せておいたのよ」と店主。
いやぁ、図書館で借りたともいえず、困ったと思っていたら、
「大丈夫よ。これ古本だから。一冊五百円。上下で千円よ。文庫されてもこれ以上の値段はするわよ」
どうやら、いろいろと手配してくれて、古本屋から取り寄せたらしいのでありました。

これでは、もう断れませんです。

「あっ、オノさん料理するわよね」と老店主。
「ジャガイモ、持って行ってよ」
と奥へ。
その時に写したのが、UPした画像なのでございますです。

分厚い二冊の本を小脇に、曲げた肘にジャガイモが入った袋を抱え、そして同じ本が自転車の前のカゴのバッグの中に。

複雑な気分のまま、「もう二度と本の話はしないぞ」と心に誓いつつ、曇天の空の下、ペタルをこぐのでありました。
人の誠意もまたホラーなのでありました。

そして、二冊の同じ本を前にして、それだけで疲れ果てたような気分で、頬杖をついているのでございますです。