2013
10.04

もし、赤いボールペンが人間ならば、この使い古したペンは何歳くらいなのでありましょうか。

あとすこしで赤いインキを使い切ってしまいそうであります。

「秋になったら、連絡するよ」と、あとはどんなに電話が鳴ろうがメールでガミガミ言われようが、「秋まで、秋まで」と自分に言い聞かせ、黙殺していたのですが、あの猛暑にはすっかり忘れ、ふとペン皿というベッドの上の赤いボールペンをみて思い出したのであります。

インクは血。
その血は情熱。
情熱は愛欲からあふれて言葉となってお互いを傷つけるのであります。
が、傷ついても出るのは血ではなく、苦々しいため息ですから、私メの求めているものは情熱ではなく、寄せ合う肌の安らぎだけだったのだと知るのでございます。

男はうぬぼれでありまして、私メもうぬぼれ者ですから、「相手はもうすっかり忘れているさ」などとは思わないのであります。
かといって、秋になるのを待っているとも考えられませぬ。
メルアドを変更せずに残しながら、「たぶん連絡するなんてウソよね」とあきらめながら、でもたまにベッドで秘所に指をあてがい愛されときの男の指の重さを懐かしんでいるだろう…と、まぁかように思ったりするのでございますです。

「こんな満開の桜を見たのははじめて」
「ウソ言え、だけども花もいいけど、秋になると枯葉が吹かれる景色も悪くないよ」

そういう断片がふとよみがえり、けれども、そういうことばかり繰り返しながら、気づくとインク切れの時となっていることを実感するのでありました。

蚊に刺されたていどの恋が楽しいのでありましょう。
いまさら出血多量の恋は、ちと億劫でございます。

おやおや、また非通知のワンギリコールがございましたです。