2014
01.14

昨年末から、ちとハードでして、カラダに優しいモノを、と思っていましたら、巨大な箱が贈られてきて、開くと湯葉とお豆腐が入っていたのでありました。

おお、これはタイムリーであります。
どっしりと濃い日本酒を舐めつつ湯葉をつまむのでありました。

肉食に慣らされた舌には無味無臭。
目をつぶって食せば、何の味なのか分かりますまい。

が、遠くの方から微妙なお味がしずかに寄せてくるのであります。
それは晩秋の森の中で大木に耳を当てると梢から風の音がかすかに聞こえてくるような。
あるいは伊豆の田園に夜更けに出て、地面に耳を当てると、遠く潮騒が伝わってくるような。
そのような味が舌の先から喉のあたりに感じられたのであります。

すると次の瞬間、ああ、湯葉だ…と、しみじみした日本の味覚にカラダ全体が包まれるではありませんか。
おフェラは愛情がなければ男に伝わりませぬ。
好き好き好き、唱えつつヤルことが極意と聞いた記憶がございます。
けれど少女が心だけでヤル、涙ぐましい切ない行為に等しい、しかし、和食を支える確固たる存在をたしかに体験したのでございます。

ではではと、千枚漬けも箸にとるのでありました。
これもかすかな塩加減でございます。

お女性の冷たいお尻に頬づりするがごとく、疲れきって火照った口内をしんしんと冷ましてくれるのであります。

その昔、モリオカの実家に京都から知人が千枚漬けをお土産に訪ねて来たことがございました。
その千枚漬けで一杯やろうと思っていましたが、いつまでたっても出てきませぬ。
厨房にたったところ、母(その頃はまだ老いてはおりませんでした)が、
「投げだ」
というのでございます。
「だーれ、糸引いで、あめでらったおん」
とのこと。

千枚漬けは、そのネトーンとした粘りが美味いのであります。
それを悪くなったと勘違いし、裏の土手の残飯捨て場に捨てたというのであります。

そういう思い出に浸りつつ、白の和食を堪能したのでございました。