2014
08.07
08.07
この世は抜け殻なのでありましょうか。
脱皮を成長と勘違いしているのかもしれませんです。
松林の樹木には、画像のような蝉の抜け殻がたくさん残されておるのでありました。
木立を熱風が吹き過ぎていき、ときおり冷たい風も混じります。
だんだら模様のような風にのって蝉の声が高く低く感じられる夏の終わりなのでございます。
「暑いですね」
「ホント暑いですね」
挨拶はコレ。
その言葉もやがては抜け殻になり、「急に涼しくなりましたね」「ホント寒いくらいですね」などという季節の扉はそこまでやってきているのかもしれませぬ。
力尽きて地べたに落ちる蝉。
飛ぼうと頑張るのでありますが、役目を果たしたのか果たさなかったのかは分かりませぬが、時が来たようであります。
地べたでジリジリと泣いておるのであります。
まだ飛べる。
まだ愛されているのかもしれない。
しかし、時は無常ということなのでございましょう。
鳴かれても、その声さえ耳には届かないのでありますです。
松林には無数の蝉の蝉しぐれで満たされているからでございます。
そして、最後の脱皮した命の抜け殻の蝉がゴミのように転がっておりますです。
「私は鳴いたことがあったでしょうか」
とでもいうように。
が、たしかに鳴いたのであります。
羽根をふるわし全身で泣いていたのでございます。
鳴かなかった蝉の脱皮に冥福を祈ることにいたします。
以上は蝉についてのみ語ったのではございませんです。