2015
07.15

1992年の秋でありましたか。
私メは路頭に迷っていたのでありました。

9月19日に突然「ムッシュー、もう来なくてよろしい」と銀座ジプシーに最後通牒のようなものを突き付けられ、それまでジプシーの子分たちから煩いほどかかってきた電話もピタリとなくなり、孤独な時を送っていたのでございました。

いつまでも、大道芸人のようなところにいるものかと常々思っていたところの、予想外の足払いでありました。
なんでも裏切り者がいるという噂が立ち、オバちゃんたちに占わせたところ、下手人は私メだということだったらしいです。
心当たりはありませんでしたけれど、今思えば謀反の心は溢れるほどでしたので、致し方ないのでございます。

画像のイベントは、唯一の知り合いだったライターさんからいただいた仕事でありまして、1日五万円。四日通しの日限占いでして計20万円というのは巨額であります。

が、こころもち表情がすぐれないのは、そういう内部事情があったためでありましょう。

本格派になるしかないとリベンジに燃え、断易をとにかく丸暗記したものであります。増冊卜易はおろか易冒まで。四柱推命も奇門遁甲なども死ぬ気で…というより、それ以外ヤルことはなく、というかお守りのお経のよーにして、まるで喰うが如くお勉強の期間でありました。でなければ不安で仕方ありませんでしたから。
ふと我に返ると現実の貧しい生活が襲ってきたり、「たたき殺してやるぞ、銀座ジプシー!!!」と歯ぎしりするほどの殺意に体がわなわなと震えるのであります。
占いのお勉強をしている時だけが心の安らかなるひとときなのでありました。

あれから、えっ、20年以上もたっているのでありますか…。
ジプシーもやがて死に、オバちゃんたちも散り散りになっておるのでございます。
20周年記念のイベントは、いまなら43周年となるのでしょうが、雑誌があるのかどうか。

肩に止めた剥製のカラスは、いまも事務所の机の上に存在しております。
恥ずかしき時代の象徴として。

さいきんになってしばしば夢に、あのころが出てまいるのです。
「ムッシュー、テレビ出演があるがどーだ」
「ほんとですか、でもテレビに出るのは、もう」
などと自由が丘のジプシー事務所で楽しげに会話しているのであります。
オバちゃん占い師たちもにこやかに「こんどムッシューに占ってもらおうかしら」「高いよ、ムッシュー先生は」「ユニークな占いを考えたんだって?」「トイレットペーパーを使った占いですけどね」「また紅茶こぼしてるよ」など笑いあっている、そういう夢を見るのでございます。

目覚めると暗い部屋で、涙が耳の方につたっていることもございます。

さーて、秋に向かって新講座の計画とかいろいろとやらねばならぬことがありますです。
頭の中のものをお伝えいたしますので、理解しようがしまいが、ノートだけは完璧に保存してくださいましよ。かならず財産になりますから。