10.22
秋から冬にかけてモリオカはスケベな雰囲気を醸し出すのであります。
お庭にも、ほつれ髪みたいに枯葉が散っているのでございました。
夕日が一隅を薄寒く照らしているのです。
元気は似合いませぬ。
「疲れたねぇ」という衰えが良く似合いますです。
「また帰っておでんしたのぉ」
とご近所のおばさん。
親戚からは嫌われておりますけれど、それ以外からは慕われているのかもしれませぬ。
「ちょっと待ってください」と東京駅で買ったお土産を渡し、敷地内の散策。
渋柿ですから渋くて食えたものではございませぬが、焼酎につけ、どろどろにとけかかったお味は最高でございます。
それもまたエロっほくて、秋の深まりのオタノシミの一つでしょうか。
仕事を忘れ、乾いた風に吹かれるのは格別なのでした。
陽が落ちた頃、さきほどのおばさんが、キノコを持ってきました。
「じゃじゃじゃ」
と遠慮なくいただき、土やゴミなどを取り除き、キレイにしたものが画像でございます。
ブナシメジでございます。
今夜は、キノコだけ鍋にしようと老母に言いまして、さっそくお酒を買いにスーパーへ。
県外不出の「鷲の尾」のちょっとだけ高いヤツを買い求めましてございます。
で、ご覧の通り、純粋にキノコだけの鍋。
最後にうどんを入れて食うのですが、これが絶品なのであります。
濃厚なキノコの出汁が効きまして、最高料理とあいなるのであります。
これで、色っぽいネェさまでもいれば申し分ないのでありますが、鼻先まで棺桶に入ったオババさまでは…。
と、そのときミシリ、カンカン…と物音が。
老親子は音のする方へ顔を向け、「出てきたね」と。
いえいえ、幽霊なのであります。
私メは見たことはございませぬが、音だけは聞こえますです。
ときには玄関先で靴を脱ぐ音、階段を駆け下りる音、戸の開く音、色々でありますが、今夜は隣の部屋にひそんでいるようであります。
「キノコの匂いにつられて出て来たんだべか」
老母は「遠慮しないで入って来ていいよん」
秋風が通り過ぎていきましたです。
ホントの話でありますよ。