2016
06.27

では、今回のモリオカへの凶方位のご報告をいたしましょう。

6月23日丙子日の立行日盤、陰の六局。例外盤使用であります。

北の方位でありますから、庚×癸の大格。天柱星、傷門、二黒、螣蛇という普通の術師ならば決して足を踏み入れないタブーの方位。

とにかく人間嫌いというか、人間に対する怒りがこみ上げるのを必死で喰いとどめるのに大変でありました。
「これはイカン!」
と察しまして、飲みにも出かけませんでした。

それでも悪さは出るのであります。

まず食堂では嫌な奴らに睨まれるのであります。ははーん、凶方位作用が出たなと、ここは無視。
運転しているとカブのバイクのオヤジに進路を妨害されたり、また旅館での朝食のバイキングでは、取ろうとしたミルクをオバハンに横からかっさわれ、はたまた中国人がぶつかって来やがり蕎麦をこぼされたり致したのであります。

帰りのモリオカのホームの待合室ではニンニク臭いオヤジがいまして、耐えられず飛び出したのであります。
それだけでなく新幹線の隣に座ったオヤジ、これがまた激しいほどのニンニク臭。三時間、ヨコシマ殿から頂いた扇子を仰ぎっぱなしという次第でありました。もう手首が筋肉痛であります。

もしも、凶方位を使ってるという自覚がなければ、何人殺したか分かりませぬ。
自分の感情の苛立ちと、相手からの妨害が重なりますから、まさに大凶方位を体感したのでございます。

では、プラス面は…。
これは、とても申し訳ないお話でありますが、競馬なのであります。
ギャンブル宝典でやっている直前大予言のメールを担当者に送ってしまってしばらくしてから、妙なカン。まさに降臨としか形容できませぬが、「このたびの宝塚記念にマリアライトが来るのではないか!」
コレなのであります。

あわてて担当者に連絡し、最後の行を「8という文字」に訂正いたしましたけれど、そういう枠ではなくて、マリアライトという名前が降臨したのであります。
結果的にマリアライトが一着となったのであります。

庚の凶方位は、カンが冴えることはたびたび体験しておりますが、今回の大格で完全に開眼いたしましたです。

と、まぁ色っぽいことは一切なく、完全に明治風な男の世界のモリオカでありましたです。

2016
06.26

ふと目を覚ましましたら、そこは温泉宿でして、妙なあかるさで雲が広がっているのでした。

毎年先祖の供養をしたあとに親戚で温泉で、する慣例行事となったのは、今年で15回目。

湯につかり、食事をたのしみ、お喋りをするだけでございます。
15年の間に、親戚にもいろいろな出来事があったわけで、言葉を選ばないといけません。

離婚とか不登校とかボケとか、そういう問題を抱えている親戚もあるので、なかなか疲れるのでございます。

翌日、ふたたび湯に入り朝食を摂り、昼前頃にはバイバイなのであります。実家に帰る頃はどっと疲れ果て、老母は「もは寝る」と言い出すので、疲れた体を回復させるために、二時間くらいかけて煮込んだ野菜スープをこしらえたのであります。
これは塩加減が大切で、岩塩に限ります。
塩が甘く感じる微妙さは、食塩では難しいのでございます。

そーしたら、宅配がチャイムを押しまして、
「はい」と出ましたら、
「おばあちゃん、具合がまた悪いのですか?」
と心配顔。
いえいえ昼寝していますなどと、荷を受け取りました。
ダンボールを開いたら、おお、ルビーのような真っ赤なさくらんぼうが!

30代の出産経験のあるお女性のよーなサクランボでありました。
まさに食い時。

いま仕事をしつつ、つまんでは口に。
そろそろ関東に戻らなければいけません。

老人たち相手の帰省でございました。

2016
06.24

悪性のインフルエンザにかかり生死を彷徨った老母でしたがおかげさまで死地から脱し、
「なに喰いてがえん?」の問いに、
「んだな、冷風麺だべか」
と答えるまでに回復いたしましたです。

それで、以前、少年刑務所だった向かいにある、前九年町の食堂へ。

冷風麺とは関東でいう、冷やし中華でございます。
名前の由来は分かりませんです。冷麺風のラーメンというところでありましょうか。
「冷やし中華だば、そのままだえんちぇ。オラホでは冷風麺ってつけるべ」とかなんとか、そのあたりかもしれませぬ。

オラホはラブホの打ち間違いではなく、「私たちのところでは」という意味であります。

出された冷風麺を老母はペロリ。

この食欲では、まだまだ死にそうもございません。
「カラダ、もとに戻ったみてだ」
と汁をすすろうとするので、「腹こわして下痢するから」とストップさせ、
「これからは、あんまりモリオカに戻れねかもしれね」と告げたのでありました。
「神戸で講習をすることになると思うから」と。

「大丈夫だ、だいじょぶだ」
と老母。「そったなごと心配しねんでさ。ちゃんと真面目に教えねばさ、ほに。こっちの方はだいじょぶだがら」

ふと、「EU離脱って何だべ」と訊かれました。
滝沢村がモリオカと合併することを拒否したえん、と説明したのでございます。
「んだんだ、滝沢は小岩井なんかで潤ってて、その儲けをモリオカにやりたくねくて合併話ばはねのげで、滝沢市になったんだおんね」
「それど同じさ」

そのとき、風が食堂の窓から吹きこんでほつれた前髪をなぶりました。
六甲から吹きおりてくる風の匂いを感じたのでございます。

「ところで神戸ってどんなとごだえん?」
「美人がとにかく多い街だな」
「あんや、気つけねば」
「気つけねさ」

神戸特別講義から一か月。
私メは神戸から千キロ以上も離れた食堂で、こうして老母と会話をしているのでございます。
これも夢マボロシにやがてはなるのだろうと、コップの冷水をゴクリと音を立てて飲み干すのでありました。