2017
04.28

釧路は霧に包まれているのでございます。

国内ではめずらしい円形交差点。どことなく異国のたたずまいなのでありました。

かつて、石川啄木が釧路新聞社に赴任した時、
「さいはての駅に降り立ち…」などと失礼な歌を残した町なのであります。
その歌はまだマシで、たとえば小樽では「悲しきは小樽の町よ歌ふことなき人人の…」などとうたっているのであります。

これでは運命障害者として夭折するのも当然カモしれませぬ。

昼は、細麺の釧路ラーメン。
やはり、舌に突き刺さるごとき、やや塩辛いのでございます。

店の女将さんに柔らかく告げたら「そだかもしれないけど」と、目に攻撃の光を宿しながら「わだしは東京の料理はさっぱり味しないのね」

文句ある? の雰囲気を「でも美味しいです」と啄木に叱られそうな軟弱な対応でかわし、しかし流れ出る汗を止めることはできないのでした。水を二杯お替りし、三杯目は女将さんが無言で注いでくれたのであります。

そして夜。
漁師もいない港をそぞろ歩くのであります。

片手には福司という、甘口の酒。
これで、昼間に摂り過ぎた塩分を中和する役目になるのでした。

すると前触れもなく雨粒が。
みるまに横殴りに。
おともなく降る雨は路面を濡らし始めるのでありました。

ふと神楽坂の雨を想い出したのでした。
「さいはての駅に…」と詠んだ啄木の心が、私メの心に舞い降りたのでございます。

なるほど、啄木はそういう気持ちだったわけだ。
最果ては場所ではなく、誰かに逢えなくなった心の最果てであったのかと。

雨が止むと、釧路の町はいっそうの霧に包まれるのでございました。