2017
10.27

夕闇迫る最果ての地を、ひた走りに走ったことは、すでに過去になってしまいましたです。

すべては日曜の夜の台風の音に「行くぞ!」と衣服をANAのキャリーに詰めたことが始まりでありました。

レンタカーにもなじみ、愛車となっておりますです。

出逢う人は半分は発狂者。正常な人々を、狂気に目覚めさせ、絶望の甘露に耽溺させて差し上げたのでありました。
歯痛に苦しむお方の頬を、まりもを模したミンクのボンボンで撫でてあげましたら、「不思議だ、痛くなくなりました」と言われたことも、二日前の夢の跡。
下痢で顔色が緑色のお方を癒したことも近い昔話。
この麻薬の手のひら。

すると「電話して。そのナマリのある声を聞くと楽になるから」と遠く京都のキチガイ病院からメールが。
ああ、汝も発狂したのか…。
悩み迷うことはない、余もまたすでに狂っておりますです。

とにかく東へ!
カーナビは「その先三百メートルを右折してください」の声に「違う」「いやだ」と反抗しておりましたが、素直に応じながら東へ!

そして、いま、至福の時を迎えておるのでありました。

過ぎ去るすべては過去なのであります。
未来はなく、今、今、今の連続があるばかり。

とは言いつつも、テキストのチェックをしながら、昨日の飯をウンコとして流すために、つかの間、座席を立ったしておるのでございます。

ア放浪の旅は、まだ続くのでございます。

2017
10.26

日の暮れのごとき湖にも人影は絶え、
「死のーよ」
波打つ声が聞こえるのでありました。

前日の雪が凍てつき「堕ちるところまで堕ちたのだ」の亡父の言葉がリフレインされるのでございました。

クルマは泥だらけ、ワイパーで拭き取ったウィンドウも曇っているのでございます。

FM局の電波も通じませぬ。

この地で、夜ともなると男衆がたむろする居酒屋がありまして、
「早稲田大学の頃は…」とか「東京生まれなんだよね」とか「シティーボーイだったんだよね」とか「中学まではIQ高かったんだよね」など過去を懐かしむ言葉が飛び交い、
「が、つまりは左遷組なのだよ」
結論はそこなのであり、「まだ分からぬ」者どもなのでございました。

「たたき上げかなんだか知らないけどさ、高卒の工場長にこき使われてるんですよ」
本音が出始めるのでございました。

水たまりに映った太陽。偽りの希望なのであります。

「死ね、死ね、死ね!」
と怒鳴れば、すこしはスッキリするよ。
しかし、やがては深い沈黙。

「木村さんだっけ、あんたはイイよなぁ」(旅先ではキムラで通す私メであります)
健康とかをみずから破壊するよーに、煙草をまかまかと吸っては煙を鼻の穴から吐き出しているのであります。
「健康など、未来が約束された奴らが気遣えばイイんだ」
とでも言うよーに。
どうみても、ふたたび都会に返り咲く人相ではない面々なのでございます。それでも上司にへいこらする日々。出来ないだろうが、明日、上司の禿げ頭を手のひらで面白いのであります。いまから繰り出し、上司の口に如雨露をつっこみ、サントリーレッドを無理やり飲ませても趣がございましょう。末期癌の腹水を静脈に注射してもイイのであります。
「はぁ~」
そこまでは憎めないご様子。
シシャモを出されましたけれど、私メの足には、とてもイケナイ食い物なのでございます。
では、自分に未来はあるのか。
あるよーで、じつはありませぬ。
夜中に足が痛みだすことを覚悟して、
「脱げ~!」
気合もろとも胃に落とすのでございました。

飯を食った後の茶碗酒もぐびぐび。

野鳥のムダに羽ばたく物音がするほか何も聞こえませぬ。
酔眼で地図を前に、明日の目的地に迷ってばかりいるのでありました。

アーメン、左遷組よ。
汝らに次なる勇気と気休めの言葉を授けよう。
「絶望、絶望、絶望!」
の二文字を。

2017
10.25

行き先は分からないのであります。

気分で走っておりますです。走りながら行き先が決まるのであります。
自分の生き方と似ているのでありました。

どこにいるのか、いまは何曜日なのか、あらためて考えないと確認できませぬ。

とても贅沢なのでありました。

夜中にジンマシンの予兆がありましたから、水をがぶ飲みしたせいで、顔はむくんでおりました。
が、関係ありませぬ。

誰も私メを待ってはおりません。
老母の待つモリオカでも、美女さまたちの待つ神戸でも、東京の十傳スクールでもないのでありました。
この点が、ア放浪の旅なのであります。

そして、岬という岬は、私メのほか、誰もいないのでありました。

独占しているのでありました。

なにも語るべき何もございませぬ。
大事な何かがあったよーな気がしましたけれど、さて、それが何だったか…。

衆議院で勝ったバカ者がパーティーをしているホテルがあり、落選した愚か者のショボい事務所があり、それはどこの地方でも同様なのでありましょう。

ランチで頼んだら、こんな面倒なことになるのでありました。

カニの殻をハサミで砕いて中身を喰えだと。
汁が肘まで滴るではございませぬか。

お味は上々。

さーて、また宿を見つけて、今夜は泥酔…いや、泥睡をしようかと思うのでありました。