2019
12.02

11月の最後の日は、いつも新宿の都税事務所で、その日の仕事を終えるのであります。

今年もまた、ショップサイトNONNAの申告書を提出したのでありました。

建物は通りのひとつ奥にございます。桜の木が幾本か都税事務所を取り囲み、遅い紅葉を待っているのでありました。
年によっては紅葉まっさかりであることも。

が、桜満開の桜を、この場所で見たことはないのでありました。
見たいというのではございません。

満開の桜を見ることのできない運命というのでしょーか。見ようと思えば、見れないことはありません。見る気が起きないことも、また運命。いや、そこに桜の木があることすら忘れているのであります。

ああ、そういえば、春になったら会おうと言ってたね。

懸命に咲く桜の花の気持ちが哀れでありますが、待たれていることも忘れているのでした。

少年が、べつの玩具に夢中になるよーに、桜は、花を散らし、夏の蝉にもてあそばれ、秋の木枯らし、冬の風にまかれ、寂しく老いていくのでございます。

書類を提出して、いつもの「愛」という喫茶店でくつろごうといたしましたら、その喫茶店は失われ、真新しい居酒屋にかわっておりました。