2019
12.20

モリオカに本格的な雪の季節が来たよーでありました。

飲んでいて、不意に静寂に包まれたと思ったら、雪が物音を吸い取りながらしんしんと降っていたのでございます。

雪は、遠い過去の出来事を思い出させるのでございます。
時間軸は現在から未来へとしか流れていないのに、過去へと誘ってくれる錯覚の力がございます。

そーいう時は、雪の魔力に従ってみても面白いのであります。

そーしますと、不思議なことに、横断歩道を渡っている老人が、遠い昔に友達として付き合っていた寿司屋の倅だったりいたします。いまは寿司屋のオヤジになっていると噂で耳にしていましたが、そして、すっかり老いてしまっているのに、頭を左に傾げて歩く癖はそのまま。
それだけでは見分けがつきませんですが、そこは雪の不思議であります。

雪は光にあつまる冬の虫のよーに、止むこともなく降り続けているのでございました。

雪の夜は、やはりウィスキー。氷にどぼどぼと注いだ時の、いっしゅん立ち昇る香り。
人相の、気色の訓練をしていれば、冷たい湯気をみることができるのでしょーが、途中で断念した私メは、その域には達しておりませんです。

「あー、雪の中をあるいて帰りたい」
けれど、ウィスキーの香りは、私メを、その店に釘づにしてしまっているのでした。