04.11
神社の境内の石畳に、瀕死の蝶が生にしがみついているのでございました。
春の陽気に、孵化する時期を間違えたのでございましょう。
踏みにじって楽にすることも出来たのでありますが、これも前世の報いかもしれないと、自然の成り行きにまかせることにいたしました。
外出の自粛が、夜の町の経営者の生活を逼迫しているとか、芸能人の先行きを不安にさせているなどの話題を耳目しておりますが、私メもいわば無頼の輩の一人でございます。
資格がある商売ではありませんから、国からの助けなど甘えた期待はできませぬ。
給料を得ていちおうの生活の保障のある勤め人とは、根本から異なるのであります。
いぜん、先輩から、
「オノ、さいてい二年分の生活費を蓄えておけ」
忠告してくれたお方は、すでに、この世の人ではございません。
「自由業ってのは、満足できる作品を完成させるために、長期間、収入なしで生活することがけっこうあるからな」
そして、付け加えて、
「あとは健康だな」
その言葉がしみじみと理解できるのでございます。
本日の十傳スクールは、完全なるリモート。
一人の部屋で講義し、ジョークを飛ばす、どこか空しさというか、スベった感はあるものの、予定まで進ませることができました。
なにしろ、中国人がもたらした新型肺炎に罹患してしまうと、数週間の隔離が待っております。これは致命的。
普通の勤め人以上の、配慮と注意と慎重さが求められるのであります。立場が違うのでございます。
ひごろから
「俺も自由業になってがっぽり儲けたい」
の話題になると、「いやいや、定額の収入というのはとても大切だよ」と心で訴えておりますけれど、やはり、このような事態になりますと、出歩いたり、みなさまを集めての講義には危機感がつきまといますです。
「出てきて、いっしょに仕事をしよう」
「なーに、平気だよ」
などの誘いを一切断っておるのでございます。
まじないを尽くし、病神を祓う秘術で防備し、生活の態度を用心する姿勢が必要と申せます。
それでも死病にかかったなら、それはそのときのこと、
地球が、自分を必要としないことを悟るしかございません。
足下の蝶は、ぴくりとも動かずに、じっと耐えております。
何のために?
明日も十傳スクール、完全リモート。
オープニングには、金持ち前夜祭Ⅱの編集画像を流しておりますです。