05.19
自粛のつづく関東を離れ、郷里のモリオカにつくと、実家の花々が迎えてくれたのであります。
「コロナ菌がぜったいに付いているから…」
と、いつもは駅にクルマで出迎えてくれる妹も、もう寄り付きもしないなか、物言わぬ花々だけが、しずかに私メを包んでくれるのでございます。
人々はみんな狂っているよーであります。
誹謗中傷の応酬がネット上で乱れているらしいし、ここぞとばかり正義や権利を振りかざすお姿もここかしこで見えるよーになっておりますです。
いわば、神様が、世界中、すべてが平等に、あさましい状態に陥るよーに仕向けたのかと空想すれば、それはそれで面白いのであります。
ソフトバンクが大赤字とか。
ここらへんで金持ちと貧乏人を入れ替えさせてやれという匂いも感じられますです。
他人の所作にクレームをつけていては、せっかくの再出発のスタートに遅れてしまいます。むかしどおりの貧乏生活を送るよーでは、そして、それはたぶん大多数なのでしょーけれど、神様を恨む筋合いはございませぬ。
そんななかでモリオカの花々だけは、誰に見られるともなく花開いているのでございました。
建設中のお家はあまり進展がなく…
「広すぎるからなぁ」
と大工衆は、内部の組み立てにいそしんでいるのでございました。秘密のドアや、隠れ部屋、ブランコやガラスの部屋などなど。
注文が多すぎたのかもしれませぬ。
「妹はこの舘に立ち入ることは控えてもらわないとな」
駅に出迎えないばかりか、1月から、私を避けているのでありますから。
妹だけでなく世間からの断絶。お家は高い塀ですっぽりと覆われ、塀の内側では花園が。
それが私メの新しい時代なのかもしれませぬ。
なぜ、モリオカに大きな家を建てるのか、わからないまま作業が進行していたのでありますが、
「こー言うことだったのか」
と、最近、自分の意識下に眠っていた囁きが聞こえてくるのであります。