2020
07.21

仙台から乗車してきたバカ女三人組の、咳をしながらマスクもせずに大騒ぎに辟易し、やっとモリオカにつき、すると、ほとんど反射的に、コンビニへと急いだのでありました。

おりました蘭丸が。わたしの蘭丸が。

髪を後ろに無造作にたばね、レジで仕事をしていたのであります。
口元にうっすらと髭が青くのびだし、
「らっしゃいませ」
薄い胸が愛おしいのであります。

わざと知らん顔をしているのか、目を伏せ、カップ焼きそばとウィスキーの値札に読み取り機をあてながら、
「袋は…」
そのときだけ視線を当ててくれるのでありました。

まるで他人を見るよーな眼で。

姿はお女性。声もお女性。身ごなしも、ささくれた指先もお女性に違いないのですが、
「おひげが…」
仙台からのバカ女とは雲泥の差。
質素可憐なのであります。

「どーして知らない顔をするんだよ」
声が出そう―になりましたです。

「袋は…」
そんな冷たくしなくてもいいのではないか。
「あります、あります」
ポケットから畳んだビニール袋を広げ品物を入れるのでありました。

右の画像は、隠し部屋の一つ。
この部屋の天井から鎖をつるし、拉致した蘭丸を閉じ込めたら、どんなにしやわせでありましょー。衣服を剥ぎとり、キリストのよーに十字につるしたら、どんなに美しいことか。

それとも蝋燭の蝋をたらしましょーか。
熱い、熱いと眉を寄せ、首を左右にいやいやをして苦悶するのでありましょーか。

「かえさないよ蘭丸。ここが蘭丸の住処なのだよ」
気を失った蘭丸に、それは美しい化粧をほどこしてあげましょー。
つんと勃起したちいさなペニスは百合の花で包んであげましょー。

妄想のままに、モリオカの夜は更けるのでありました。

屋敷は八分通り出来上がり、カーテンと、クーラーの室外機が設置されれば住める状態。
「お盆過ぎまでお待ちください」
と担当者が言うには、庭に石を置いた関係上、庭の整備とエクステリアが残っているためとか。

明日も蘭丸に逢いに行くことを、心に誓うのでありました。