2021
08.20

赤の他人であることを申し上げておきますけれど、ドロンパくんと、東北新幹線に乗り込んだのでありました。
ホームは、東北にいく組と、金沢へ向かう組。
てっきり、金沢で最高のファッションをご披露するのだろうと思っておりましたら、
「やややや、同じ車両か…」
後ろ姿で分かりませんが、これに真っ白いフレームのサングラス。
太い金のネックレス。
うわっ! 最高でございます。

「こんにちは、ドロンパくん、テキサスからのお帰りですか」

でも、彼の存在に意識を向けていたおかげで、ときおりゴホゴホッと咳をする中年に怒りを向けることもなく、モリオカ駅に到着したのでございます。

まさしく平和な1970年代からのお迎えだったよーな気がいたしました。
ローリングストーンズ来日!

眩暈のする存在感のために、予定していた四柱推命のテキストのチェックは不可能でありました。
なにが珍しいのか車内の通路を、行ったり来たり。
そのたびに星印が視界の端にチラつくのでございます。

オシャレは自由。自由なんだ。どー着こなそうと、その方の趣味。個性である。

自分に言い聞かせるのでありますが、しかめっ面をしても、表情がふやけてしまうのでありました。

新幹線はすべるよーにモリオカ駅へと到着。

ふたたび世捨て人生活のスタートであります。

と、ところが、ドロンパくんの姿がございません。
下車するときに、デッキで私メの後ろに立っていたはずでありましたが…。

周囲をみまわしても、あの個性的なギラギラは見当たりませんでした。

なんとない寂寥感につつまれたまま、オンボロの中央タクシーに乗り込むのでございました。
モリオカのタクシーは、東京のよーに五輪のためにトヨタから購入したカッコイイものではなく、イヤにクッションの柔い、廃車寸前のクルマを大事に使っているのでございます。
そこには復興五輪にダマされた、あわれな敗軍の象徴があるばかり。

「ドロンパくんも乗っているかな」
もういちど車窓に目をやりましたが、青空がひろがっているばかりでございました。