2021
12.08

「発展」という二文字が、私メの中から消えておりますです。
いろいろな業者から、提携をせぬか、一緒に力を合わせればお互いにイイことがあるのだから、と誘われても、
「発展しようとは思いませんから」
すげなくお断りをしているのでございます。

発展して建設的に上に延びるより、シダとかコケのように地面によこに広がることのほうが自分に似合っているよーに感じるのであります。

というより現在の自由を大事にしたい意識の方が強いのでありましょー。
宇宙に行って地球を眺めるより、部屋で地球儀を見ていたほうがマシではないかとも思うのでございます。

先日、版元さんからメールがございまして、
「人相の本が、品切れになっていて、一万円以上の値が付いています」
教えられて驚きましたです。
私メの分厚い人相本のことでございます。
増版か、別の出版社に打診しようかというお話らしいのでございます。

「面倒くさいですね」
「いやいや大丈夫ですよ」
促されても、その気になりません。

以前ならば、ビジネスチャンスと意気込んだはずでありますのに、その意気がゼロなのであります。

ああ、古い人間なのだなと感じることもしばしばであります。
新しい時代の価値観がよく分かりません。
すべてが、
「嘘だよな」
直感してしまうのであります。
褒められても、煽てられても、進められても、何を食っても、
「嘘だよな」
ここに着地するのでございます。

考えることと言えば、
「あのお女性も、来年でもう60代なのか」
とか、そういうことばかりであります。

「20年後の今日、この店で会おう」
約束してから20年どころか40年も経ち、会おうどころか、会ってはならぬ心境であります。
郷里で街中を散歩している時、「あのお女性に会うのではないか」と周囲を見回すのですが、見回すのは若いお女性でして、
「いけないいけない」
60代のお女性こそ、あのお女性ではないかと、たちまち心がしぼむのであります。
「若ければイイというのではない」
懸命に自分に言い聞かせますけれど、どーしてなのか視線は新鮮な果実のよーな若いお女性に向いてしまい、だけでなく、ニタニタしてしまうのでございます。上機嫌になる自分を止めることができません。

同じ年代の男女の多くは、脚を引きずって歩いていたり、白髪だったり、禿げていたり、突如とした立ち止まったり、そして不意に引き返したり、汚くクシャミをしたり、廃人と化しているのでございます。

陰鬱な雨空を好むのは、発展のない風景が快く落ち着くからでございましょー。