2022
06.25

鮭のアタマ。
これを探しておりました。
しかし、タイのお頭などは目にしても、鮭のカマはあったとしても、アタマの部分は偶然にしか手に入りませんです。
そして、無いとなると、よけいに欲しくなるものでして、
「これは丸一尾、買うしかないか…」
そう心に決めつつも、スーパーやら、魚屋を、しらみつぶしにチェックしていたのでありました。

最終的には、いつもの如く、断易に従い、
「世空者即致」
に、自分を落とし、「どーせ、この店にもないさ」と、欲しいというパワーを弱めたのであります。
是か非でも「欲しい」と心がはやるうちは、なぜか手に入らないこの世の原則があるものでして、すべては「諦めた頃」に天から舞い降りるよーに見つかるものなのであります。
この原則を「世空者即致」として理論に取り込んでいるから、断易はスゴイのであります。

で、
「ありました、鮭のアタマが四尾ぶんも。150円で!」

さて、私メは鮭のアタマのみを述べたいのではございません。

鮭のアタマを手に入れ、気づいたら空腹でありました。
たまたま鄙びた中華食堂を目にしたので、そこでラーメンでも…と。
ガラガラ戸を引きましたら、店内は意外と混んでおりまして、客さまたちが、こちらを振り向きましてございます。
「?」
さまざまな視線に、こめかみに痛いくらいの視線が混ざっておりました。たしかに身に覚えのある視線でありました。ほろ苦い視線。

なによう、とでもいうよーな視線。
「!」
心臓が真っ赤に肥大いたしました。

蘭丸…。
たしかに、そこにジェンダーの蘭丸さまの温度を感じたのでありました。
おそるおそる見回しましたが、マボロシだったよーでありました。

そして、ラーメンをすすりおえ、お代を支払い、外に出て、ガラス戸をしめました。
その時、油で汚れたガラスの奥から、蘭丸さまのお顔が。
店員だったのでありました。
胸の奥で、音楽が流れました。途切れていた音楽が。

まさに世空者即致でございますです。