2022
08.27

「オノの家には何か居る」
亡霊を否定する人も、口をそろえて言うのでした。
しかし、その亡霊たちが、家を建て替えると同時に、どこかへいなくなってしまいましたです。

建て替える前の古い日本家屋には、そこかしこに生ぬるい存在をキャッチしておりました。
リモート講義のために来た貰ったアシスタントは、ギクリと足が止まり、古い母屋に一歩も踏み出せなかったです。

たとえば、隣の部屋でひそひそ話が聞こえます。しかし、襖をあけても誰もおりません。しばらくすると、また声が。
声は、三cmほどの襖の間から発せられているよーでした。
また、友達が「出たー!」と腰を抜かしたのは、鏡。鏡の中を子供が横に走り去ったというのです。
しかし、それらは家族では日常的。
「おらほの家の幽霊は悪いはずがない」
除霊などは思案の外でありました。

無人の玄関先で、草履を脱ぐ音も、よく耳にいたします。

しかし、なかでも驚いたのは、お盆に仏壇の前に出していた雪洞が突如として点灯したこと。
コンセントが外れていたにも関わらずであります。

小人の幽霊もいたそーでして、障子のさんを、平安時代の装束をした小人が走っていたりしたそーでございます。

話せば際限がございません。
お陰で十傳スクールの講義での、これらの話題は尽きることがないのでありました。

それが昨夜、廊下の曲がり角で、なつかしい生ぬるさをキャッチいたしました。
廊下は、突き当りで90度に右に折れ、また90度に左に折れ、その角に突き当りの壁がございます。
灰色のマントをはおった何者かが、正座をしていたよーな。
ほとんど瞬間的でした。
性別もわかりません。
目の端でとらえただけで、ちゃんと見よーとしたら、そこには暗がりが沈んでいるばかり。この曲がり角は夜は漆黒の闇なのであります。むろん照明はございますが。

曲がり角のこのスポットに、甲冑を設置しようかと思っておりましたが、座布団がイイのかも…などと思ったのでした。

しかし…。
なんだかホッと致しました。
「やっと帰ってきたくれたのか」
と。