2023
03.14

北海道の方々なら馴染みのある魚らしいのでありますが、「ごっこ」、これが神楽坂の魚コーナーに置いていましたです。
うおっ! けっして喜びの声ではなく、不気味な物体に直面したおののきでございます。
買いました。

キッチンで、腹のあたりだと思われる個所に包丁の刃を入れてソリソリと裂きました。
と、巨大な魚卵のかたまりが、のっこりと出てきました。
あとは空洞。
皮と骨。
その皮と骨が、頭蓋にいたるまで、気持ち悪いほど簡単に切れてしまうのでございます。

「食えるのであろーか…?」
軽く湯がきぬめりを取るのだと言われ、言われたとおりに湯がいたのでありました。
ゼラチン質でございます。

どこか変に生臭いので、大根とネギをぶつ切りにして煮込み、味噌と醤油で味付けたのでございます。
「おおっ!」
薄味の底の方から濃厚な甘みが舌を震わせるのでした。

魚卵は、
「痛風に悪い」
と知りながら、うっとりとする味の誘惑に勝つことはできませぬ。

醜いものほど「美味い」のであります。
アンコウしかり、ウナギしかり、ナマコしかりであります。

悪いお女性も「美味い」のと同じかもしれませぬ。麻薬のうま味でございましょーか。

ただ、食いなれない魚のせいか、それとも処理しなければならぬ部位を鍋に入れたからでありましょーか。
一時間後は、すべて藻屑と流れたしまったのてございます。
「おお、また来たぞ!」
間欠的に突如と襲い来る下っ腹のゴロゴロは、直後にはトイレに飛び込まなくては我慢が出来ないのでございます。

体内の悪いものが、ごっこによって押し出されたのかもしれません。

はぁはぁと幾往復かしたあとは、体力も失われ、バタンQ。

まさに悪女の魅力に等しいのでございました。

これが私メの冬の終わりなのでございました。