2023
04.20

郷里のモリオカにおります。
関東より三週間遅い春であります。

庭は荒れ、やがて雑草の茂る前奏曲のよーに、可憐な花が咲いているのであります。
ここで、優しい気持ちになってしまうと、タイヘンなことになるのであります。
無情に花々を刈り取らねば、庭は手の付けられないほどの雑草に占領されるのでございます。

小生意気なお女性を、その若さの輝きにいうとおりに聞いていると、とんでもないオババに化すよーに。
「男もだべ」
ジジイなんか、ところかまわず屁をコキまくるべ。
なんていうオババ殿を目を霞ませて眺めると、若い頃の容姿が見えてくるのでございます。男殺しの小悪魔の頃の容姿が。珍魚落雁の頃の容姿が。
繊細でいちずで、別れ際にこころもち肩をすくめサヨナラを告げ、けれど意地悪て冷たくて残酷な魅力のあった少女の頃の容姿が。
お小水すらも清らかな聖水で、さあ、ぶっかけてくださいと哀願すらしたものを。

それなのに時は恐ろしい。
雑草のよーに強く成長してしまうのであります。
二十歳で死ぬって言ってたくせに。美人薄命だったなら、いまでも偲んで悲しむものを。
可愛らしかった笑顔が、ああ、いまでは痩せた歯ぐきから歯根がのぞき、おもわず視線をそらしてしまってしまう変化。
「重力の力に逆らえず」なんて諦めずに、重力に逆らってくださいまし。
図太くなるのは仕方ないにせよ、ホントになんとかしてください。
だからといって無理な若作りは、もっと不気味ですからね。

問題は、この雑草の花であります。
毎年、この季節になると迷ってしまうのであります。
花が枯れてから刈り取るべきか否かを。