2025
02.06

アップルパイの誘惑には勝てませんです。

ショッピングモールのスーパーのレジを出たところに、ケーキ屋かあり、ショーウィンドウにアップルパイが飾られていては、もはやこちらの負けでございます。
たとえ、いちどは立ち去ったとしても、エスカレーターに足を乗せるまえに、引き返してしまうことは目に見えているのですから。

ああ、出会ってしまった痺れるよーな不幸は、お女性との出会いにも匹敵いたしますです。
なにとぞ、心は段ボールであって欲しいと願うのに、甘い冬果実であっては。
段ボールであれば、いつでもサヨナラできますから安心して付き合うことが出来るのであります。

命式でも良いのであります。
段ボールの命式。カサカサに乾いたお女性。
ヒアルロン酸を注入し、パンパンに脹れたお顔のお女性が増え、故弘田三枝子か山本リンダのごとく痛々しくもオドロオドロしい現代の雨月物語。

心は少女の頃から発達しませんから、恋したら大変なのであります。
最終的には男から「いい加減にしろ、クソ婆!」と怒鳴られることになりますが、その心の痛みは余人が知るはずもございません。

「だから恋してはいけないと言ったではありませぬか」
と、私メはため息をつくのであります。
そして、そのお女性の熱い救いを認める視線に、
「ダメダメ、私メはダメですよ。アップルパイが待っているのだから」
ニヤッとわらうお女性の口元の歯ぐきが痩せて汚れた歯根がのぞいているのでありました。

老いらくの恋は、アップルバイとの比較に因るのであります。