2023
01.19

その駅で途中下車しよーと思ったのは、
「わたしの住んでいる町は…」
ふと、厚木パルコで鑑定していた頃、そこのスポーツ用品店で働いていたお女性のことが、反射的に頭をかすめたからであります。
厚木とは東京をはさんで反対側にある町なのでありました。
「通勤に2時間30分はかかるのよ」

肩をすぼめると鎖骨と肩骨のくびれがへこんで、もしも雨でぬれれば、
「ちいさな湖になるね」
「いやらしー。エッチなこと考えたな」
そういうことで、すこしだけ親しくなりました。

「わたしは28歳。十傳さんは?」
「38歳」

ところが、ある日を境に彼女は姿を消しました。
私メは毎週土日だけ鑑定で厚木に行っていたので、詳しいことは分かりません。
どころかスポーツ用品店のスタッフが、彼女の居場所を知らないかと、逆に私メに問い詰めるのであります。
「十傳さんなら知っているんじゃないかって…」

しかし、彼女がいなくなってひと月ほどたった土曜日のこと。
一見して「ヤバい奴だな」と思える赤パンの男が、「おい!」鑑定コーナーに怒鳴り込んできたのでありました。
「あいつを、オイのオンナをどこにかくまっている?」
オイのオンナとは、その彼女であることは、すぐに分かりました。

そこで彼女が消えたことも、スタッフの反応も、一瞬にして氷解しました。
私メが彼女を、この男から守っているのだと誤解されているのでありました。

男は私メの襟首を掴みましたです。
「触れましたね」と男の拳をちらと見下ろし、「なーんだ」
男の目の奥に目を戻し、私メはニタリとしましたです。
「なーんだ、シロートさんか」
「えっ?」
男がたじろぎましたので、
「どこの組のお方ざんすか、オタクは?」

やられるかな? 歯の一本はやられるかな、と覚悟しましたが、男は襟の拳をほどき、あわてたように手を放し、なにごとか呟いて立ち去りましたです。

そして30年後ー。
途中下車した駅は、彼女が住んでいるという町なのでありました。

名物の佐野ラーメンをすすり、壁の古い町並みの写真を眺めました。
「ちっきしょうめぇ~」
かくまってほしいと言われたら、たぶん喜んで、そーしていたな。そーしたらどーなっていただろう。
頼ってくれなかったことを、ちと残念にも思うのでした。

ストーカー規制法ができる以前のお話なのでございますです。
お女性さんたち、いや男どもも、お気をつけあそばせ。

  1. 今日、元交際相手の70代女性に対するストーカー行為で、40代男性が逮捕されました。また、交際相手の60代男性のことを、20代女子大生が刺す事件がありました。年の差恋愛、年上好きの男女が増えているのでしょうか。

    ●十傳より→とにかくストーカーを許してはいけませんです。殺処分が妥当でしょう、男女とも。