2023
05.10

庭木を毛虫が這い上がっているのでした。

タマゴから毛虫、そして蛹となって蛾に孵化し夜空を飛び回り死んでいく。
人間で言えば、毛虫の段階は青春でありましょーか。
こんなに油断して庭木の目立つところを這っていては、きっと鳥についばまれてしまうことでしょー。

皆さんにもあったことかもしれませんが、若いうちに死んでしまった級友がいたのではないでしょーか。
「えーっ!」
死の報せを朝一番に知らされ、その日は激しく動揺し、場合によっては一同に集められ校長から注意を与えられたり。
そしてしばらくは、死んだ級友の机に、牛乳瓶に花を添えたりして。

私メにも記憶がございます。
体育の授業のときに、足のふくらはぎが痙攣するという級友がいまして、そいつの足をマッサージしたのであります。級友とは申しましても、会話したことがなく、その時がはじめて口をきいたという程度の仲でございます。
イヤに黄色いふくらはぎだと思ったことを憶えておりますです。
その男の死を告げられたのが翌朝でしたから、うわっと気持ち悪くなりましたです。

そいつは自宅の自室で死んでいたのであります。
ビニール袋を頭からすっぽりかぶり息が出来ずに死んだのであります。
セメダインを吸っていたのであります。
いゆわるシンナー遊びの常習者であったということであります。

死んだと聞かされた時、おもわず前日にもんでやったそいつのふくらはぎのシコッタ重たさが指によみがえったものでありました。

後年、生年月日を調べましたら、忌神との干合が大運と月運にかかっているのを見て、
「死期に当たっていたのか」
と納得すると同時に、シンナー遊びでなかったとしたら、どーいうことで死んだのかと想像をめぐらしたのでありました。
当時の卒業アルバムだったかには、それぞれの住所と生年月日が記されておるのであります。時間は不明ですが、推測することは可能でございます。

陽光の中をひたすら這い上がる、この毛虫も、たとえ今日は野鳥の餌にならなくても、いつかは、その油断によって長生きすることは難しいだろうと思いましたです。
そして、そう思った瞬間に、
「ぶっ潰して殺してしまおうか!」
この衝動が湧きました。
衝動を抑えた時、ああ、なんと自分は善人であったことかと誇らしく感じたことでありました。

  1. 毛虫の命を奪わなかった先生、ステキです
    今の季節、イソイソと道路を横断するババケムシの姿を頻繁に見かけます
    車を運転中「うわっ」と引きそうになるババケムシのため
    幾度となく急ハンドルをきったことか
    何でババケムシは道路を横断するのでしょう
    なにも渡らず真っすぐ道路の端をセッセと歩いていれば
    車に轢かれることもないものを
    答えてくれるものなら一度は聞いてみたいものです

      ●十傳より→死にたいのでしょー、毛虫に生まれたことを悲観して。