2026
09.02

モリオカでのお話であります。

流刑地に突っ込んでいる老母を憐れんで月一で連れ出すのであります。
クルマの助手席で老母は、初めは「ここは何処だえん?」と戸惑っているのですが、そのうちに「ああ、三戸町か」とか「まっすぐ行くと上の橋だえん」と覚醒していくのであります。

そして、だいたいは鰻屋。
が、到着が早すぎて画像の看板が下がっていました。
「寸っとお待ちゃんせ 十一時半から開けあんす」
モリオカ弁で書かれております。

老母は鰻を特別に食いたいというのではありません。
この老舗は、老母の母、フラッパーの祖母からの馴染みなのであり、古い店員さんやご主人が総出でもてなしてくれるのが嬉しいのであります。

そういう時の老母は頭脳明晰であります。思い出話に花を咲かせるのであります。

頭脳明晰といえば、あとは金銭の話。

鰻屋の前に車を止め、開店を待っていたら、「ヨコちゃんはどーしてる?」と切り出しました。
ヨコちゃんというのは、85歳になる叔母であります。
「何かあったら、おめはんは面倒くせことに巻き込まれるよ」
ヨコちゃんは行かず後家でありまして、亡くなれば、その財産は私メにまわってきますです。ヨコちゃんの遺産を、別の従妹が狙っています。
「いまのうちに手を打っておかねば、わがねよ」と堕ち窪んだ眼球を光らせるのであります。

さあ、ふたりして鰻を食い、そしてふたたび流刑地に向かっていましたら、
「おめはん、昼ご飯を食わなくていいのっか?」
ときました。

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