2011
08.20

べつに福島ガンバレなんて応援するつもりはございません。
が、今年の伏死魔のお桃ちゃんは絶品なのであります。
これはまごうことなき事実でございます。

セシウムを浴びているかなどどうでもよいこと。
福島のヤンキーネェチャンって感じで、たっぷりと蜜がはいっていまして、これでは死んでも構わぬだろうというほどであります。

濡れた桃の繊維が甘さをたたえたまま喉チンコに絡みつきながら胃袋へとすべりおちていくのでございます。

スーパーに行きますと、伏死魔産のお桃ちゃんがグレたような安い値段をふられて並べられているはずでごさいますです。

一発おわって、ラブホから出て、無言で河原などを歩いているような抒情であります。
いつもなら歯をみがいて「じゃぁ元気で」と別れたいのに、どうしてか優しい気持ちにさせられるのであります。
「これから予定あるのか?」
なんて聞いたりしてしまうのであります。
「怒ってるのか?」「後悔してるのか?」と女の気持ちが気になるのであります。
「オノくんさぁ…」
と言われて、一歩後ろをあるく彼女をふりかえると、
「無理しなくていい。帰ってもいいよ」
とうすく笑われ、しずかに傷ついてしまう自分に気づいたりするのであります。
もっとやさしい気のきいた言葉をかけてやりたいのに、それのできない自分に滅入ってしまうのでございました。

やさしい言葉をかけると、本命の彼女との関係がややこしくなると計算する自分なのでありました。
愛してはいないけれど、魂が吸い込まれ、とかされていく女なのでありました。

伏死魔のお桃ちゃんは、スーパーの棚のなかで、そうやって腐りかけているのでございます。

「そういう女とばかりつきあっている、取り返しのつかないことになるぞ」
四十年前に亡父から言われたことばでございます。
その言葉に逆らったために、お桃の美味しさを知ってしまったようであります。
亡父はそれを知らずに死んだのでありました。