2011
08.31

まったく、そういう予定はなかったのでしたが、おもえば奈良を知らないことに気づきました。
京都に数年間、住みながら、となりの奈良に足を伸ばしたことは一度もなかったのであります。

従妹にノリコという美人がいるらしいことを聞いてはいても、まだ彼女にあったことがございません。それと同じようなことかもしれませんです。
とおい昔に妹は「お兄ちゃんのタイプだと思う」とニヤニヤして語ったのですが、先日、初盆でお邪魔した時にも、彼女は不在でありました。

私にとって奈良もそういう場所だったのであります。

旅行のおわりに、ぶらりと歩いてみようときめました。

建物も仏像も、京都のものと比してスケールが大きく、迫力をともなって胸にせまってくるのでありますが、どうじに細胞のひとつひとつがくつろぐ安らぎをも広げてくれているのでございます。

このまま、仏像にまもられながら昼寝をきめこみたくなるのであります。

と、そのとき携帯電話がなりました。
アサ芸のエロ心理テストの確認ということ。
「破いたストッキングは手錠代わりにするのが、目隠しに使うより点数が高いのですが、この理由はなんでしょうか?」
まわりをはばかりながら、やや小声で
「手首と手首をつないだ瞬間に、女の心理は一体感を得たたかぶりに濡れるからです」
仏像の眉がびくりと上がったようでありました。
「ではですね、挿入の時にパンティの脇からというのは…」
アサ芸さんの質問ははてしなく続くのでありました。

日照りでも大雨でも、その水位を一定に保つといわれる猿沢の池のほとりで、わが心もかくありたいものだと、汗でぬれた携帯電話を拭きつつ、しばしの間、水面をわたる微風に瞼をとじたくらいにするのでありました。

気まぐれ旅行も終わりを告げているのでありました。
空は夏に疲れ、めぐってくる秋をうけとめているようでございます。