2011
10.11

柚子の木は自宅の北側にございます。

先月の台風で、家々の南側の木々は、海水を含んだ豪雨のためにチリチリに枯れているのでありますが、北側の木だけは、その被害を免れているのであります。

その柚子の木にハチの巣が作られていたのでありました。

もしも、この枝を剪定していたら、ヤバイことになっていたかもしれません。
やっと先月、モリオカの実家で毛虫にやられてたところが治ったばかりでしたから、「今年は虫の災難かもしれぬ」などとスンでのところで厄を免れ、ホッと胸をなでおろしたのでございます。

それにしても、ハチたちは冬を前にご苦労なことであります。

働くことが快楽なのでありましょうか。そうでも考えなければ、10月のこの季節に最後の労働を見せるハチたちのことを理解できません。

やがては冬になる前に死滅してしまうだろうハチたちは、きっと動き回ることが快楽なのでありましょう。

「働かなきゃ、生きてけないもんね」
ご中年のお女性さんが、そう呟いていたことを思い出すのであります。
「好きで働いているんじゃないのよ。離婚して一人でしょう。誰も助けてなんかくれないしね」
とは言いながら、やはり彼女さんも働くことが嫌いじゃないんだと思いました。
なぜなら、とても生き生きしていましたから。

そう言ったら、
「夢があるからね。この歳でも」
と、ふいに童顔になって、いろんな夢を語って聞かせてくれました。
こころもち胸も膨らんだようにみえたのは、私メのスケベな目の錯覚だったかもしれません。

叶うかどうかなんて問題じゃないのかもしれません。叶わなくても「こうしたいなぁ」という夢があれば、その希望する夢から遠いかもしれないけれど、まあまあなところに着地するように運命がはたらきかけてくれるものであります。

もっとも、その男と別れられることが条件であります。

「えっ、その男?」

そうです。運命の足を引っ張っているのは、愛欲にがんじがらめになっている関係。それが鎖であります。
女だけでなく男もまた同様であります。
「鎖」は「腐り」に通じますです。

別れたとたんに運命は好転するものでございます。

いや、本人は分かっているのですよね。

が、本当の冬が来るまで、肌を寄せ合っていたいのでしょう。