2011
11.28

会社の申告書を新宿都税事務所に提出した足で、リトルコリアンと化した大久保に立ち寄ったのであります。

ここは30年前は薄暗いラブホ街。連れ込み宿と称した方が適切な、それは卑猥な通りでありました。
その頃の名残りは多少あるのでありますが、これではラブホを利用することもできませぬ。
表参道と巣鴨の通りの中間くらいの層がうろうろ。
ときおり、これから売り出す韓国の歌い手たちが、粗末なプラカードをもって、にこやかに「よろしくお願いします」と声をかけながら行列するのであります。
学園祭で「10号室で演奏をしますので、きてくださーい」みたいなノリなのでありました。

とある朝鮮料理の店。
本場のマッコリの舌にピリッとくる刺激を味わいつつ、ケジャンとか冷麺とかをむさぼったのでございます。

私メはモリオカの冷麺が苦手。朝鮮冷麺は好物なのであります。

それにしても辛い。
メマイしそうなのであります。
辛すぎて食うだけで体力を消耗してしまうのであります。

が、大久保は安心いたします。
喧騒と無法の街なのであります。

ここに30年前に3年ほど住んでいましたが、当時はヤクザと情婦とホステスの街だったのでございます。窓を開けると、となりのアパートで肉地獄に耽っている裸の男女の肉体の一部が覗けて見え、それがどこが脚の部分で腕がどう回されているのかを判断するのにしばらく時間をようしたものでございます。

迷路のような路地を入っていきますと、おお、まだそのアパートがあるではありませんか。
リニューアルしたとはいえ、あの頃とほとんど同じでございます。

イチバン奥の2階の部屋に、私メは住んでいたのでありました。

いちど引っ越してしまうと、以前に住んでいた場所には、なぜか足を踏み入れないモノですが、勇気を出してみるものでございますね。

若い頃の感性というか、感じ方というものが一瞬のうちに体内によみがえるのであります。
けれど、親しくしていたお姉さま方もいるはずもなく、先住者である私メにとって、そこは単なる想い出の場所でしかないのであります。

過去の巡礼とは、懐かしくも、すこし淋しいものがつきまとうようであります。