12.18
卑猥な小石ではありませんか。
いつぞやの海で拾ったものなのであります。
楕円の小石のなかは空洞。
大自然は天才であります。このような造形をこしらえながら、海に捨てておくとは。
で、これでループタイを作ろうかと思いたったのありました。
本当は喉元のアクセントとしてブローチを探していたのですが、これが探すとなると、気にいったものはなかなか見つかりません。
シャツのイチバン上のボタンあたりをご覧くださいまし。
少し作ってはこうやってタメしながら、
「うーん、こうではないようだなぁ」
と、また作り直すのであります。
そうして夜は更けゆくのでありました。
さいごに、ループはやはり革紐しかないようだ、と翌朝、「ゆざわや」の開店と同時、
「か、か、革の紐はど、どこでしょうか」
店内を掃除したばかりのモップ片手の、太めのネエさまに尋ね、指を差したほうへと急ぐのでありました。
そうして、完成したのが、この画像なのでありました。
卑猥さは失われましたか、なかなかよろしいのではないかと、自負したりしておりますです。
卑猥さも海の記憶も失われたのが、ちと残念。
ジャン・コクトーのように、耳におしあてても、海の響きを懐かしむことはできませんのです。
「あんた、キョトさ行って、変わったぁ、はぁ、まえのオノさんじゃねもの、まえだば、こったな細工しねがったよぬぇ。わだしっさぁ、前のオノさんのほが好ぎだったぅぁ」
メガネ、整形、メイク……ナチュナルは苦手。マジより擬似が楽。っつうように変わりました私メには、もはや本当の潮騒も聞こえてはきますまい。
ボロいアパートで、そういったモリオカのお不良ムスメが、もしや今夜来るのではないかと、鉄階段に鳴り響くだろうヒールの音に耳を澄ましていましたのに、ついに聞くことがなかったように、私メの耳にはホントの海の音はたぶん聞こえてこないのであろうと、淋しいような安堵のような、そんな気持ちなのであります。
過去と現在が混濁する頭で、けれど、世界に一つしかないニセモノもイイものではないかと、作り終えたルーフタイをしみじみとうち眺めるのでありました。