2012
03.31

モリオカに戻っているのであります。
いつもなら歓楽街に繰り出すのですが、「たまにはいいかぁ」とポケットウィスキーをコンビニで買い、タクシーを見送って実家に引き返したという次第であります。

「めずらしこともあるもんだぁ」
と老母はいい、
「こんかいはモリオカの経済に貢献しねのっかぁ?」
とお茶を出したのであります。

お茶を出されてはお仕舞いであります。
なぜかお茶は、楽しい宴からうとんじられる存在。
飲み屋ではお茶を引くといって忌み嫌われ、結婚式などでも出されるのはお茶の代わりに桜湯。

そういえば、おちゃっぴいとか、茶化すとか、おちゃめとか、茶々を入れるとか、お茶はいい意味に使われておりませんですね。

なんてことを考えつつ、ポケットウィスキーを呷るのでございます。

何年か前の今日、私メは北海道の礼文島に旅行して、海が荒れて2日間ほど足止めを喰らったことがありました。
窓の外の暴風雪を眺めつつの2日間というのは苦痛なほどの退屈さであります。
ホテルのロビーと客室を、なんども行ったり来たり。

亡父が食道癌を手術したのも、七年前の今日だったようです。
翌日からモリオカは大荒れになり、春の吹雪でございました。
最初、手術が予定されたのは満月の日。けれど満月は手術には良くないから、日にちをずらしてくれと申し出たのでした。
ところが、執刀医の名前を見て、こりゃダメかもとため息したことを覚えておりますです。
「望月先生」
これが、執刀医の名前でございました。
望月は満月のことでございます。

こういうことを運命のイタズラというのでありましょうね。

亡父は、それでも一年もちこたえたのではありますが…。

こういう偶然の符合は、注意していると、いたるところにあるものであります。

今宵、ひとり家飲みになったのも、なにかの偶然かもしれませんです。
すべては「ああ、そういえば…」と後になってから気づき、口を押さえるのでありますけれど。