2012
07.16

日本中、夏祭りの季節なのであります。

茅ケ崎でもーー
浜降り祭という、各神社から神輿を担いで海へと入る祭りで、夜中から賑わったのでありました。

私メも仕事を片づけて、ただ酒を飲みに向かったのでありますです。
係の知り合いに「よぅっ!」と手を上げるとただ酒の仲間入り。

知り合いも、いつものネクタイ姿ではなく、勇ましい海の男。
みんな、一日海の男になっているのであります。

オガさんたちも、わが息子を豪胆な海の男に育てたいのか、乱暴な声援を送っているのでありました。

お仕着せの祭りのコスチュームに着替えれば、もはや遠慮はいりませぬ。
たちまち二合の冷酒を胃におさめ、私メも偽りの海の男。

日が昇ると、たちまち暑いのであります。

グラッシャー、グラッシャー、グラッシャー!

ニセモノの海の男たちは調子づくのであります。
私メはふらふらなのであります。

だんだんとネェさんたちの胸や腰のあたりに視線が貼りつくのでございます。
汗で髪の毛の芯まで濡れて、リーゼント状態。

「ほら、酒だ!」
「はい、焼きそば!」
「ノリ巻きはいかが?」

と差しだされたものを、断ることもせず口に放るのでありますです。

霊峰富士を遠くに眺め、私メは戦線を離脱。
もう、これ以上、参加を続けていたら、酔っ払ってぶっ倒れそうなのであります。

海岸には人々が溢れておるのであります。

「津波よ、襲ってこい!」

などと叫びましたら、周囲は一瞬、空間が空きましてございますです。
ここで「満州を奪い返せ!」
とオフザケを怒鳴っても何のことやら分からないかもしれませぬ。

いずれにしても、真の夏に手が届きますです。

「おニイさん、興奮しなさんな、はい!」
と私メより、若いオバはんに、焼き鳥を三本もらいまして、トドメの升酒をぐびり、ぐびり。

神輿は、海へと、ざぶざぶはいって、これがミソギなのでありましょうか。
京都の祇園祭は、七月一日に鴨川のせせらぎで剣のミソギ、そしてその日から祭りの当日まで、室町の血統の良い男子を、男たちが世話をするのでありますが、浜の祭りはそういうことにはこだわらず、男も女もいっしょに参加するわけであります。

つまりーー
神輿は男根、海はおべっちょ。
これが交わるというのが、隠れた意味なのでございましょう。

しかし、もう、どーでもイイのであります。

午後もひと担ぎするらしく誘われましたが、目的はすでに満たしておりますから、お断りしまして、熟柿臭い息で、帰路につくのでありました。