07.25
地方都市の困るところは大手の銀行が少ない点であります。
みずほ銀行に用事があり、ためにわざわざクルマで市街地まで出かけなければなりませぬ。
ついでに、こずかた城址を歩いてみるのでありました。
モリオカも他の都市とどうよう、城址を中心にひらけておりますです。
美しい石垣といわれていますが、昭和の終わりに大規模な修復工事をしたので当然かもしれませぬ。
小学生の頃は写生会などでよく訪れたものであります。
では、大人になれば…射精会と言いたいところでありますが、今回は、どーも、そのような気分になれないのでありました。
冬は、城跡の斜面がとけた雪が凍てつき、滑って歩けたものではありませぬ。
石川啄木の石碑がありまして、
「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし十五の心」
と銘されているのでありました。
不来方とは、こずかたと発音しますです。
誰も来ないような遠方の地と言う意味であります。
こずかたが、「それはなんぼしたって…」ということで、森が岡となり、盛岡城と名を変えたということであります。
良き歌であります。
私メが15歳の頃…中学三年でありますね。
いったい何を考え、どんな少年だったかは、もう忘れてしまっているのであります。
まいにち手のひらを汚していたことだけは間違いないのですが。
そういえば、昨夜、あるお女性から電話がござました。
音信の途切れたお女性だったので、ちょっと話しこんだのでございます。
受話器のむこうでドアが開き、そして閉まる音がいたしました。
呼びかけて、あっと声を飲んだ声もいたしました。
水を流す音、イヌの吠える様子もうかがえました。
「だめね、もう電話しないときめていたのに」
お女性のやや声をおとした声が鼓膜をたたきました。
電話が終わると窓の外は雨でございました。
私メに連絡するくらいなのだから、あまりうまくいっていないのだなとおもいました。
ひとつだけ想い出したのであります。
15歳の記憶。
ちょうど夏休み。仲間たちは海にキャンプにいったのでございます。
てっきり私メもそのつもりだったのでしたが、誘われませんでした。
それで、その当日、ひとりで山田線で海にでかけ、仲間たちのキャンプする浜を眺めて、引き返して来たのであります。
帰りの山田線の向かいの座席で、年上の女の人が涙をこぼしておりました。
恋情がほとばしりました。
モリオカ駅に戻るまで、しあわせでございました。