2012
08.01

潮風療法というものがあるのかどーかはさだかではありませぬ。
さだかではありませが、効果があるとひとりで決めているであります。

海からの塩分を多量に含んだ風に、裸身をさらすことで、原始的なパワーが補充される。
モリオカ疲れがよういに引きませんので、短パン一枚で、海岸の道を自転車で走るのでありました。

夏空が広がっております。

入道雲というものは、不思議と郷愁をそそりますです。
海鳴りに音という音はかき消され、あるくほどの速度でペダルをふみますとなにかたいへんな忘れ物をしたような気持ちになるのであります。

電話が鳴りました。
横浜の中華街で占いをしている同業者からでありました。
用事らしい用事はなく、いっせきもうけるから、こんど飲もうというお誘いでありました。
最後に「西村先生も、たまに商売しているんだよ」

もう20年も前に断易を習っていた先輩占い師であります。
気学が頭から離脱できずに、ついに断易をマスター出来なかったオバちゃん占い師であります。

「先生、すこしボケたんだよなぁ」
御歳、70歳ちょっとでありましょうか。

「わたし、夢がありますの。どこかの校長先生と結婚して……」
と当時からおっしゃることが浮いていたのであります。
「結婚して、それで、校長先生が死んじゃうでしょ、先に。そしたら恩給や、年金ぐらしでウハウハよ」

あのオバちゃんがボケたのか…。
時は過ぎゆくのであります。

5年ほど前、突然にオバちゃんから電話がありまして、
「貸していたテープを返してくださらないこと」
と世間話もなにもなく、こう切り出されたことがありました。
講義のテープを借りたことがありましたが、お礼の煎餅の詰め合わせと一緒に返していたのであります。

台風の影響で、沖は黒雲。

潮風療法は即効性はありませぬ。
いちにち1時間程度、そうですねぇ、だいたい2週間は必要かもしれませんです。

「返しましたよ、たしかに」
と電話をきった、そのあとで、さるお女性との待ち合わせの場所に向かったのであります。
だから記憶に鮮明に残っているのでありましょうか。

あとになって、「そういえば」と想い出す、ある出来事の前にかならず現れる人物がいるものであります。
そのキイ婆ソンがボケてしまっては…。