2012
10.14

先日、八王子に行きましたが、その奥地にも足を伸ばしたのであります。
秋川渓谷のそばの、高級老人ホームに。

そこには、大先輩の女…いや、90歳過ぎのお婆ちゃん占い師が住んでいるからであります。
以前は、千葉県で占いを商売にしていたお方でして、専門は株占。
それで自分も大儲けして、だから高級老人ホームに住むことができたのであります。

世の中には、こういう優れた占い師がいるものであります。

が、いまでは完全に隠居。

「まあまあ」と、受付に出てきてくれまして、「お電話いただいたときから、ドキドキしてお待ちしていましたのよ」とこぼれる笑顔でありました。

アダチさんという、このお方には、なみなみならぬお世話になっておりまして、断易の教室に、私メを紹介してくれたのも、このアダチさんでありました。

教室の帰りには、当時、私メは調布に住んでいましたから、途中まで電車でいっしょに乗り合わせ、「今日の講義は、オノさん、あなた、おわかりになった?」と、内容を復習いたしたりしたものであります。

完成したばかりの断易の講義用のテキストを、まずはお渡ししました。
「まあまあ、すばらしいテキストじゃないこと」
などとほめていただき、
「近くに、おいしいラーメン屋さんがあるから」
と、誘われたのでありました。

90過ぎとは思えぬほど、かくしゃくとして安心したのであります。

「そう、教室を開くのね、楽しみね」
とラーメンをズズズ。

「オノさんのことだから秘伝も教えるわね、きっと」
「時を見計らって、ですけどね」
「それもそうだけど、断易のABCを教えられるのは、もうオノさんしかいないでしょう」
「そう思います」
と、どこまでも占いのお話なのでありました。

あとは、死んだ仲間の占い師のお話。
「あの方は三年前に亡くなられたのよ」とか「そうそう、田中さんはもうボケちゃって、わたしもそうとうにきてますけど」と、不思議な世間話でありました。

帰りは、駅まで見送っていただき、
「またね」
「また…」
と別れを告げたのでございますです。

いつまた会えるのか、会おうと思えば、会えない距離ではありませぬ。
が、やはり、いつも、これが最後かなと思ったりいたしますです。

自宅まできっかり二時間。

まだ調布にいた頃のような、奇妙な感覚が、なかなか抜けないのでありました。