10.20
火傷をしたのでありました。
水ぶくれができておりますです。
沸騰した薬缶に触れたためでありました。
こんな場所に……と、その火傷をした部分に注目するのが、この稼業の業とでもいうのでありましょうか。
薬指の第一関節。
薬指というのは、太陽丘に根差す指であり、したがって解釈は、太陽丘の意味を吟味するコトになりますです。
さすれば芸術と富、人気について何やら変化があるのかもしれず、火傷はその予兆と判断できまする。
これは手相の古い原書であります。
「手相のお勉強」というタイトル。
ちと古い例なのでありますが、手相のすべてが記されているので、重宝しておりますです。
暇をみつけて訳しておりました。
とつぜんにフランス語で書かれたりしておりまして、翻訳には手間がかかりました。
どの出版社からもオファーはございませぬ。
教えていないからかもしれませんけど。
さてさて、薬指の第一関節は……。
なになに、第三関節、つまり手のひらに近い部分は、
「この部分が長いほど幸運や成功を暗示する」
ちがう、第一関節が問題なのであります。
「第二関節が、肥大していると実利的な芸術で成功します」
ちがう、知りたいのは第一関節だでば。
「第一関節が……」
そう、コレでありますです。
「この部分が普通以上に長いと、芸術や美術の分野で高尚さを表します」
ちと知りたいこととは違いますです。
「また、肥大した指頭になっていると官能的な傾向があらわれ、肉欲の強い人です」
指頭ではありませぬが、水ぶくれで、一時的に肥大しているといえば、それに準じるかもしれませぬ。
いや、ソレに相違ありませんでしょう。
じじつ、ちと、そういう気分であることは否定しきれませぬ。
が、火傷はキズでありますから、その肉欲が危険サインということになりますです。
つまり女難の相。
アブナイ、アブナイ。
今日明日はおとなしく仕事をするに限るのでありますです。
火傷ひとつで、ずいぶんと楽しめましたのでありますです。