2012
11.28
11.28
ヤマトの使者が、「お届けモノです」と渡してくれたのが、コレでありました。
時鮭、タラコ、筋子、そして鷲の尾。
鷲の尾の詮を抜くと、ふわりとした樽の香りが微かに立ちのぼり、これでは誘惑に勝つ必要がございませぬ。
「仕事が残っているのにな」
と呟いたものの、意識は一升壜に釘づけなのでありました。
一杯だけのはずが、二杯、三杯とかさなり、タラコを肴にどこまでもはいっていくのでございます。
PCボードの冷たさに、芯までかじかんだ指先まで温まるのでございます。
夜空には、今年最小の満月がかかり、11月も仕舞いだと告げるように冴え冴えと光っておるのでありました。
あれとこれとそれを仕上げてから、これとそれを今月中にしなければならないのだなと、忘れないように頭で確認をしてから、「これが最後だから」と自分に言い訳して、ドクドクと酒をなみなみとそそぐのでございます。
魚の腹の、どこにこのようなルビーのような色が隠されているのでございましょうか。
はらりと一塩の筋子の口のなかでつぶれる、その美味いムゴさと言ったらありませぬ。
お女性の肉体を侮辱するほどの贅沢さなのであります。
「スケペなカラダだよな」
「ねぇ、わたし、そんなにスケペなカラダしている?」
独特の匂いを湧きあがらせながら、侮辱の言葉を歓喜に変換させていくお女性の心の襞を、さらに言葉で攻めつづけ、
「自分の音をきいてごらん」
と三本の指でつま弾くと、
筋子がつぶれるような飛沫をシーツに放奔させるのでございます。
ひとことも愛を告げずに時が過ぎる距離感は、冷酒がカラダに沁み入るほどのやすらぎなのであります。