2014
08.19

夏を惜しむかのように花弁を漂白させて熱風に揺れております。

残り少ない八月の数日ほど白の似合う季節はありますまい。
日に焼けた素肌に、ざっくりとシャツをはおり浜辺をあるけば、帆のように背中をはらみ、髪の根元をしごくのでございます。

雪より白い花びらは、官能よりも甘く魂を疼かせますです。
白の似合う人とそうでない人。

「お前には白が似合わない」という言葉は、黒が似合わないといわれるより、静かに心を傷つけるのかもしれませんです。
そういう言葉の記憶が、花びらを眺めていると思い出されます。
けれども、似合わなくても似合うと言えば、易者の心は濁ります。

しかし、白をまとったとたんに別人のように綺麗に潤うお女性が存在するのも事実であります。
そのお女性たちは「夏よ逝かないで!」とでも詠嘆しているように感じられますです。「わたしは夏が大キライ」と言っていたとしても。

そして、夏を脅かすように、九月の花々がチラホラと咲き始めているのでありました。

そうなると白い花は、どんなに輝こうとしても、なぜか季節に取り残された淋しい翳りを発します。

お前だけは老いさせたくない、夏よ止まってくれ!

と叫んだとしても、娼婦の下着のような色に男は目移りしてしまうのも事実。

やがて浜辺には、白を失ったお女性たちか海鳴りの重さに集まることでございましょう。積乱雲さえ、最後の発展になり切れぬ、そんな海を眺めに。
白を忘れたお女性の数の二倍だけ、浜辺にはサンダルがうち捨てられるのでございます。