2015
07.28

ガムがひっついたよーな暑さの関東に戻りましたら、お桃ちゃんが待っておりました。

「冷やして食べて~ん」と記されておりましたので、さっそく冷蔵庫に。

郵便物だのをチェックしていましたら、ほどよい時間が経過いたしましたので、お桃ちゃんの皮をムキムキいたしました。

はふ~んと良き香りがいたしします。
うたたねしたお女性の吐息のよーであります。

おーっ、これはイイぞぉ。冷ややかな甘さが口の中ですべるのでございます。

額といわず顎先といわず玉の汗がぼたぼたとしたたる中での、ひとときの冷風になぐさめられた感じでございました。

さいきんクーラーが故障したという事例が多ございますよ。

こんな夏の盛りに…。お見舞い申し上げますです。
はんたいにクーラーがあるのに、あえて使わずに我慢しているお方もおいでであります。
いずれにせよ暑さは精神状態を錯乱させ、気づいた時は血まみれの包丁を握っていたりしやすいのでお気を付けくださいませ。

ロメオはクーラーの良く効く部屋で、座布団をかぶって昼寝でございます。
ベッドの下には、いつもはナッツがいるのですが、一週間前から入院。
子宮と乳腺から膿が出ておりまして、
女医は、
「使わないからよ」
と私メに流し目をくれるのでありました。
「せつないものなのよ」
と。

ナッツの不在を案じているのかいないのかロメオはベッドの上で留守番をしているよーでございました。

ナッツの生死を占った断易は後日、ご披露いたしますです。

本日は暑くて疲れて、とても無理でございます。

2015
07.27

モリオカでも35度になると予報されていたので、田沢湖に逃れたのでございました。

田沢湖には何度も行ったことがあると思っていたのですが、私メの思い違い。完全なる記憶違いでありました。
誰かの話を自分のこととして信じていたのでありました。

森を抜け、まぶしいほどの湖畔に出ては、また林道に入る素晴らしい田沢湖の外周路を車で走らせていると、それは見知らぬ世界。
親しいはずのお女性の別の顔を見せられている思いなのでございました。

「あなたは私といっしょにここに来たことがあるわ」
「いいえ、それはあなたの思い違いです。私はあなたと来たことはありません」
という映画、「去年マリエンバードで」を彷彿させるような記憶の錯綜でございました。

湖からの風は森林の香りとブレンドさせて、開け放した窓から髪をなぶらせるのであります。

記憶にはあるのに実際には来たことのない場所であることに、発狂にちかい衝撃を受け、おもわずブナの幹に「2015年8月27日に参上!」と釘で彫り込みたい気持ちに襲われたのでございます。

「わたしが好きなら田沢湖まで逢いに来て」
と言われたことがあったのでしょうか。そして行ってはいないのに長い間のうちに行ったとおもいこんでいたのでしょうか。
いえいえ、そう言われたことなどありませんから、そんなはずはございません。

いや。
私メは湖畔を走りながら一人のお女性を記憶の底から見つけました。
とおい昔に喧嘩別れしたお女性の妹でございました。

背中むきで下着をつけながら、
「姉妹丼だね」
と笑う妹。
それも実際にあったのかどうかぼやけてしまっているのでありました。

田沢湖から玉川ダムをかすめ、八幡平アスピーテへと進路をとりまして、ふたたび岩手領にはいりましたらカッとするほどの陽射し。

「珈琲のむべ、どっかで」
と老母は見晴らし台で喉がカラカラだおんと言うのです。

この老婆はだれなのか。
私メの母だとおもっていたけれど、ほんとうはだれなのかと、私メは幻想から醒めきれずに山肌を這いのぼる冷風に吹かれておりました。

2015
07.26

黙しておりましたが、人嫌いが際立っておりましたから、今回のモリオカの帰省はちょうど良いタイミングでした。

特定の人に対する嫌悪ではなく、これも老いの一つだと自覚いたしております。

飲みに行くこともせず、狭く暗い部屋に閉じこもって小難しい断易の専門書を読みふけっております。

そんななか庭の向こうの畑に西瓜が実っていることを発見しました。
五月だったかそのあたりに遊びで植えたヤツであります。
赤ん坊の頭ほどの西瓜が三つほど。

へへぇってなモノで、嬉しいのでありました。
消費税でオリンピックの経費を捻出しよーという目論見に対する抵抗というには、あまりにもささやかすぎますが、けれど、家でも西瓜をつくれる驚きは相当なものでございます。

割ってはんぶん食べて見ましたら、これがバカに甘いのでございます。
腹がだぶだぶになりましたので、あとは夕食後にとって置きましたら、老母が、
「ありゃーん、松井さんにやったぁーん」
と言うではありませぬか。
松井さんというのは向かい80になるご婦人でございます。
いつもオカズを老母に差し入れてくれるお方なのでございます。

「仕方ねな」
と残る二つのうちひとつを採ろうとしましたが、おりからの土砂降り。
諦めましてございます。

で、暗い部屋にはいって、ふたたび断易本の続きをめくるのでありました。
古い空調が部屋を震わせております。
どこかで子供の泣き声がしております。

しばし静養の日はつづくのでありました。