2017
06.24
06.24
なにもかもが遠い世界のことだったような気がいたします。
風呂に入ってから、連載の仕事をちゃちゃちゃと片付け、あとは料理に箸をつけつつ酒を呷るだけ。
法事の親族とは離れた部屋ですので安心であります。
手ぬぐい掛けにかけた手ぬぐいから温泉の匂いが部屋中に満ちているのでございます。浴衣の背中にかいた汗が、ここちよく冷え始め、ふと脈絡もなく南国に思いを馳せたりするのでありました。
「皆様がお呼びですが」と電話があるのに、若い仲居さんが戸の外から声をかけるのでありました。
「寝ているらしい、と伝えて」
嗄れ声が、まだ残っているので、こういう雰囲気では渋いのであります。
窓を開けますと、初夏の空気が入ってまいります。
「すべてはどーでもイイことなんだよな」
もういちど呟くのであります。
それから明け方に見た夢を、かみしめるように思い出すのでありました。