10.03
断易の卦を出すのは色々ありまして、オーソドックスなのは、神蓍といわれる画像の小箱に、八角形のサイコロを六つ入れ、その出た目を卦に変換させるやり方であります。
私メはいくつかの神蓍を持っておりまして、これは、もっぱら自宅や持ち歩き用としております。基本的にはですよ。
ギタリストがギターを何本か持っていたり釣り師が釣竿を用途に応じて使い分けるのに似ています。
相撲取りが各場所にお女性を持つこととは少し違うかもしれませんが、基本的には同じであります。
弘法筆を選ばずとか申しているにはいますが、キチンとした道具は易者にとって心構えとして大切なことであります。
道具が自分になじむのにも、いささか時間がかかるのであります。
だいたい三年はかかりましょーか。
なんとなく方位の根付けみたいなものですね。
これは自分で取り付けたものであります。
いわゆる大極であります。
「はじめに大極ありて、それが陰と陽とに分かち…」
そのつもりなのであります。
そして手になじませ、指の油脂が神蓍を渋い色に仕立てるのに五年でありましょーか。
人それぞれであります。
各箱の中は、トノコで仕上げましたが、これも市販時にはないことで、自分で塗装をほどこしましたです。
一人のお女性を完成品に仕立てるよーなものだと、さきほどから言いたくて抑えてまいりましたが、我慢できずに吐露いたしました。
美しくても味のないお女性が多いのでありますが、快楽になじませ、みずから男のお尻に手をまわし腰をうねらせるよーにするのは、神蓍と一体となるよーに時間のかかることかもしれませぬが、それは男の役目なのかもしれませぬ。
そのためにはキチンと根付けが必要であります。
遁甲で、日にちは三日間同じところに入れば根が付くのだと言うのは、それが場所でもお女性でも男でも、一日くらいでは良さも悪さも分からないのだということから推測すれば理解できることと損じますです。
恋は日盤、結婚は月盤を使い分けるということも、ここから見えてはきませんでしょーか。
お話をもどしまして、
たくさんの道具を有していようと、ひとつひとつの道具に魂を入れなければ、出た卦を信頼することができませぬ。
が、それぞれに特徴がございまして、事業占に適した神蓍と、恋愛占をすると一目瞭然の卦を出す神蓍とがございます。
神蓍とサイコロの相性もございましょう。そういう特徴が子犬の性格のように分かってくると
「発狂しているんだな、オレって」
嬉しくなるのであります。
そうそう、神蓍には、象牙のサイコロを入れておりますが、この象牙職人が高齢化し、絶品の危機に差し掛かっているとか。
若手の職人がいたら貴重であります。
もっとも彫り師の品格が出るため、本物になるにはやはり10年はかかるでしょーが。