2017
10.13

不意打ちのように関東は秋へと緞帳を開けたのでありました。

体調も復活。
が、老人性のムカつき病はいっそう悪化。
物忘れも重なりますです。

それでも秋。
深い音楽を聞きつつ、仕事をしていますと、そして本日のようにうすら寒い雨の匂いが漂ってきますと、あり金を掴んで羽田に向かいたくなるのであります。

居場所を変えたところでどーなるわけでもないことは知っておりますが、身体がいうことをきく間に、どこかに帰りたくなるのであります。

「おやおやキムラちゃん、ひさしぶり」
偽りの旅人でありますから、各地の飲み屋には偽名のボトルが眠っているはずなのであります。
「あたらしく女の子を入れたんですね」
名前だけでなくキャラも変えますから、言葉遣いも違うのであります。

ホテルで弁当を開けることが苦手なのであります。
食べた後の空の容器や、使い終わった箸の処分に困るのでございます。ゴミ箱に捨てることができませぬ。
で、エレベータの中に置いたりいたしますです。
まさか隣の部屋のドアノブに引っかけたりはいたしませぬ。衝動に駆られはいたしますけれど。

「神経質ね」
なんとでも仰ってください。
疲れ果てても外食。多くは飲み屋で済ませるのでございます。
インスタントラーメンを300円で作ってくれる店など重宝いたします。

「あいや!」
ママさんなどの面白い手相を見つけても、易者の正体を隠しておりますから、吟味してみることはできませぬ。
「胃袋やられてますね」
くらいは「素人なんですけどね」と言えて、あとは謡風に「どこどこ行くの~♪」を唸ったりいたします。
良いですよ。謡風に歌うとあの歌は。

的中しているときは、女の子も身を乗り出し、
「なんでも知ってるのね、物知り物知り」
の言葉で危険を感じ取り、ウィスキーをトリプルでお代わり。

手相セミナーでは、このくらいはマスターできるのであります。
でも、実占は必要であります。ケチケチせず教えてますから。
もう、それほどたっぷりに時間が残されているわけではないので。

十傳出版を立ち上げよ―かとも。

いえいえ、戯言でございますです。

秋が更けてゆき、すると雨の夜道で濡れた犬を抱いている少年の自分に出会えるよーな気がしたりもいたします。