2017
12.21

滅びの町で、疲れを癒そーとしましたが、まず疲れていませんし、ぼやっとしていてもイライラがつのるので、タクシーを呼び、
「どこか、ねーですか」
と聞きましたから、
「そー言われたのは初めてでやんす」

で、しばらく走ってもらっていたら、
「あれは何ですか」
前方に、ハイカラな刑務所のような建物がございました。
周囲に掘割まで出来ていて、それが青く凍っているのであります。

「スケート場か!」
50年ぶりのリンクに立ったのであります。

掘割はスケートリンクでしたが、係のお方に、
「まずは室内で…」
遠回しに、お年なのだから屋外の400Мでいきなりは無理でしょうと、やんわり言われ、従ったのでありました。

平日です。

貸し切り状態でありました。

よたよたと滑ってもオショシくないのでありました。

そのうちに、それまでは、懸命に滑っていたので聞こえなかった松田聖子や国生さゆりの曲が、やわらかく鼓膜から脳髄に届くのでありました。

騎乗位から見下ろした私メではございませぬ。

二時間も滑ったら足首がイカれてひっ転ぶことしばしば。

もう夢中でございます。

困難なことに挑戦していますと、ストレスも消えるのでございます。

氷粉を飛ばし、シャッーッと横に停止することも可能なまでに上達したのでございます。

中学の頃に心は戻っているのであります。

とー

若い女が三人も現われたではありませぬか。

「男であれば、声をかける」
男の掟であります。

「誰かに似てる!」
などと笑われ、つい嬉しくなるのでありました。

「明日も来るぞ!」
残した言葉に手を振られ、係の人にタクシーを呼んでもらう私メなのでありました。